研究実績の概要 |
X線自由電子レーザーからの高強度X線が物質に照射された際に起こるフェムト秒X線ダメージ過程を解明するために、ダイヤモンドをモデル試料としてX線自由電子レーザー施設SACLAにおいて時間間隔を制御したダブルパルスX線レーザーパルスを用いたX線ポンプ・X線プローブ実験を昨年度に行った。光子エネルギー7.8 keVのポンプ光と11.5 keVのプローブ光を集光ミラーによって200 nmのサイズに集光し、集光点にダイヤモンドを設置した。このときポンプ光とプローブ光の時間間隔を様々に変えながら、ダイヤモンドからのプローブ光の111, 220, 311, 400, 331反射を測定した。 今年度は、得られた実験データの解析を行った。詳細な解析の結果、X線照射後20フェムト秒程度から炭素原子の変位が起こり始めることが明らかになった。また、実験データを詳細に解析することによって、この原子変位が起こり始める以前に炭素原子の価電子の空間分布が大きく変化しており、特にポンプ光照射後約10フェムト秒程度で炭素ー炭素間の共有結合が破壊されて価電子の空間分布が等方的になることが明らかになった。この結果は、ポンプ照射によって原子のポテンシャルが変化して等方的になることが原子変位の駆動力となっていることを示唆している。すなわち、X線自由電子レーザーの照射による物質への構造ダメージが非熱的なものであることが明らかになったといえる。
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