本研究では,これまで研究例が少ない酸素四面体を基本とする新規強誘電体に注目し,強誘電転移の抑制によって生じる構造揺らぎの特徴と,構造揺らぎがマクロ物性に与える影響を調べた.その結果,2.5 K以下の低温で過剰な格子比熱が生じており,非晶質固体において従来知られている過剰比熱の特徴と非常によく類似していることがわかった.放射光を用いた単結晶X線回折の結果からは,本系では結晶の周期性を維持したまま,骨格構造の乱れに起因した短距離相関を形成していることが明らかになった.本結果は,結晶性固体においてそれと相反する非晶質的な性質が見られていることを意味し,学術的に大きな意義をもつと考える.
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