研究課題
平成29年度は予定通り,気象庁,環境省大気汚染物質広域監視システム,NTTドコモ環境センサーネットワークによる気温・湿度・風・気圧の地上気象観測データセットを作成して品質管理を行った.また,気象研究所「#関東雪結晶 プロジェクト」とウェザーリポートにより得られたシチズンサイエンスによる地上降水種別観測データセットを作成し,品質管理を行った.さらに,地上マイクロ波放射計,雲・降水レーダー,二重偏波ドップラーレーダー,ディスドロメータによる観測データを取得し,品質管理を行った.このほか,首都圏降雪現象の大気・雲・降水の三次元分布を理解するため,2017年3月27日に那須で雪崩が発生した事例について数値シミュレーションを中心とした事例解析を行い,短時間で大雪となった要因について調査した.その結果,多量の水蒸気供給の持続と,地形の影響により降雪が強化されていることが示唆され,同様な大雪事例の統計解析から閉塞段階の南岸低気圧が関東付近を通過している際に短時間での大雪が発生していたことが明らかとなった.この結果を論文投稿し,印刷済みである.さらに,シチズンサイエンスによる雪結晶観測「#関東雪結晶 プロジェクト」の取り組みとこれを用いた事例解析研究についてとりまとめた.この取り組みにより,これまでにない超高密度な地上雪結晶観測が実施され,現象の実態解明だけでなく数値予報モデルの評価・改良や偏波レーダーを用いた降水種別判別手法の高精度化に有益であることがわかった.この結果を論文投稿し,印刷済みである.これらの研究成果や本課題での取り組みについて,日本雪氷学会主催の講習会や日本気象学会主催のサイエンスカフェをはじめとする一般向けの講演を20件行ったほか,著書『雲を愛する技術』(光文社)の執筆・刊行などを通して,アウトリーチ活動を行った.
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していたデータセットの作成と観測データ取得,品質管理については滞りなく実施することができた.これに加えて,先行して事例解析を行い,大気・雲・降水の三次元構造についての解析を進めた.これらのことから,平成29年度の研究計画は当初の計画以上に進展している.
引き続き観測データ取得・品質管理を行うとともに,2016年11月24日の関東降雪事例と2018年1月22日の関東大雪事例を中心に,高密度地上気象・降水種別観測データ,二重偏波レーダー等を用いて,首都圏降雪事例における降水種別と大気下層の気象場についての事例解析を行う.また,これらの事例の数値シミュレーションを行い,各種観測データを用いて計算結果の妥当性を評価した上で,大気・雲・降水の三次元構造を解析する.これらの事例については,降雪現象の開始から終了に至るまでの過程も調査し,降雪のメカニズムを検討する.
(理由)他の研究予算を旅費に充てることができたため.(使用計画)平成30年度の研究遂行に必要な研究打ち合わせ等の旅費に充てる.
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (16件) (うち招待講演 8件) 図書 (1件) 備考 (3件)
雪氷
巻: 80 ページ: 115-129
巻: 80 ページ: 131-147
「2017年3月27日に栃木県那須町で発生した雪崩災害に関する調査研究」研究成果報告書
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
CAS/JSC WGNE Research Activities in Atmospheric and Oceanic Modelling
巻: 47 ページ: 1.03-1.04
巻: 47 ページ: 4.03-4.04
天気
巻: 64 ページ: 483-491
巻: 64 ページ: 823-826
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/fo/fo3/araki/snowcrystals.html
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/fo/fo3/araki/snowstorm.html
http://www.mri-jma.go.jp/Dep/fo/fo3/araki/