研究課題/領域番号 |
17K14394
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
荒木 健太郎 気象庁気象研究所, 予報研究部, 研究官 (40636031)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 降雪 / 南岸低気圧 / 数値シミュレーション / シチズンサイエンス / 高層気象観測 / データセット / 品質管理 |
研究実績の概要 |
平成30年度は,予定通り観測データの取得・品質管理を継続し,事例解析等の研究を行った. まず,地上降水種別観測データセットの基となるシチズンサイエンスによる観測データについて,気象研究所「#関東雪結晶 プロジェクト」の取り組みを発展させ,データ収集範囲の全国展開やデータの収集・解析作業の効率化を目的に,本課題において新しくシステム開発を行った.開発したシステム「空ウォッチ」(https://sora-watch.3d-amagumo.com/)は携帯端末用アプリ「3D雨雲ウォッチ」の一機能として2019年2月にリリースし,気象研究所より報道発表等を行った. また,2017年3月27日の首都圏大雪事例について水平解像度を変えた数値シミュレーション(5km, 2km, 1km, 500m, 250m)を実施し,大気・雲・降水の三次元構造と大雪の予測可能性を調べた.その結果,本事例で大気下層の降雪強化プロセスを通した短時間大雪を表現するには,水平解像度2km以下のモデルが求められることが明らかとなった. さらに,2018年1月22日の首都圏大雪事例について,高層気象観測をはじめとする各種観測データをもとに大気・雲・降水の三次元構造を調べた.その結果,地上降雪開始直前に高度約2km以下の大気下層が顕著に高湿化・低温化し,Cold-Air Damming(CAD)と呼ばれる下層の北寄りの風の強化が起こっていた.CADの発達に伴って大気下層に強風軸が現れ,CAD最発達時に下層強風も強まっていたことが明らかとなった. これらの研究成果や本課題での取り組みについて,一般向けのシンポジウム・講演会や,著書の執筆・刊行などを通して,アウトリーチ活動を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた観測データ取得・品質管理の継続や,各種観測データ等を用いた事例解析については滞りなく実施することができた.これに加えて,新たにシチズンサイエンスによる気象観測のシステム開発を行ったことで,データ収集・整理の作業が大幅に効率化され,本課題の目標達成のための事例解析の作業も効率化された.これらのことから,平成30年度の研究計画は当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き観測データ取得・品質管理を行うとともに,各種観測データや数値シミュレーションの結果を用いて,首都圏降雪事例における降水種別と大気下層の気象場についての事例解析を行う.平成30年度に取り上げた2018年1月22日の大雪事例の追加解析を行うとともに,その他の首都圏降雪事例を取り上げて大気・雲・降水の三次元構造の違いを吟味する.これらの結果をもとに降水種別の決定に特に重要な役割を果たしている気象要素を抽出し,高精度に雨雪判別を行うために着目すべき気象要素を整理の上,新たな高精度雨雪判別手法を提案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)他の研究予算を旅費に充てることができたため. (使用計画)平成31年度の研究遂行に必要な研究打ち合わせ等の旅費,研究支援者派遣に充てる.
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備考 |
本課題の成果により,2018年5月に日本雪氷学会関東・中部・西日本支部論文賞(2017年度)「低気圧に伴う那須大雪時の表層雪崩発生に関わる降雪特性」を受賞した. また,2018年度に本課題に関わる取材111件(NHK,フジテレビ,テレビ朝日,TBS,日本テレビ,毎日新聞,朝日新聞,読売新聞等)に対応した.
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