ノスケール・センサノードではその小ささから雑音の影響を強く受け,通信感度が低下するという本質的な課題がある.そこで本研究では,生物システム等でみられる確率共鳴現象という非線形物理現象を活用してこの問題の解決に取り組んでいる. 2017年度では,トンネル電流の非線形特性を生かすと確率共鳴現象が観測され,センサノードでの微弱な出力電流を簡易に増幅できる点を見出した.2018年度ではこの検討を発展させ,ナノスケール・センサノードが通信電波を受信するメカニズムに非線形性が見いだせないかを理論的に検討した.非線形性が見いだせれば本現象を活用できる可能性は高い. ナノスケールのセンサノード端末を実現するためには,システムを構成するすべての機能の飛躍的なダウンスケールが必須となる.本検討では電磁気理論から根本的なダウンスケールが難しいアンテナ部分について,ナノ構造の機械振動による電波受信という,これまでの理論とは全く異なるメカニズムによる実現を考えた.従来のアンテナと同様,機械振動の共振周波数を電波周波数と一致させることで大振動を獲得し,電波受信感度を良好に獲得することが期待できた.本検討ではこの状況ではなく,巧みに二つの周波数を若干量ずらすことで非線形振動が発生することを見出した.非線形科学で示されるところの分岐現象が発生するため,感度としても良好なものが得られる.このような非線形性を活用して現象を発現させると,さらなる感度改善が期待される.
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