研究実績の概要 |
本研究は、i)とii)の大きなふたつの柱からなる。 ⅰ)ラグーナ全体については、a-dの項目を設定し、次のように研究を進めた。 a.治水事業については、リドからソットマリーナにおける堤防(Mrazzi)跡を調査した。今後はAA.VV., Murazzi: Le muraglie della paura, Venezia, 1999をもとに歴史を把握する。/b.漁業、農業、狩猟については、D.カラビの文献ほかに、ブラーノの漁業を取り上げているL. Gorlato, Storia di Brano, Venezia 2010、農業を生業としているサンテラズモに関する資料を収集した。また博物館(Museo del Territorio delle Valli e della Laguna di Venezia)の館長から狩猟の歴史に関する情報を得ることができた。今後、これらの資料を用いて分析・考察を深める。/c.宗教、検疫、軍事、娯楽機能などを受け入れてきた島々については、リドの現地調査を行い、都市開発において、1930年代が重要な転換点であったという仮説が浮かび上がった。/d.開発の変遷については、マルゲーラ工業地帯の変遷を追えるような地図史料および文献を収集する必要がある。 ⅱ)テッラフェルマからヴェネツィア周辺に注ぐ河川・運河の流域については、文献資料の収集を重点的に行った。今後は各流域の博物館、文書館などの史料収集を行い、分析、考察を進める必要がある。また、バッキリオーネ川流域においては、ヴィチェンツァを重点的に調査し、新たな都市像を考察することができた。従来は建築家アンドレア・パラーディオの設計した建築ばかりが注目されているが、本調査では、水の都市であることに着目し、水車による産業がいかに発展していたかを把握した。今後は史料を収集し、考察を進める。
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