研究課題/領域番号 |
17K14792
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
樋渡 彩 近畿大学, 工学部, 講師 (90793696)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ブラーノ / カタスト・ナポレオニコ / ボッテーガ / モンテグロット・テルメ / 温泉 / デーゼ川流域 / 生産拠点 |
研究実績の概要 |
本研究は、i)とii)の大きなふたつの柱からなる。 ⅰ)ラグーナ全体については、主にブラーノの空間構造の分析を進めた。 19世紀初頭に作成された不動産台帳(カタスト・ナポレオニコ)およびその地図を用いて、当時の土地利用、建物用途を把握した。中央に位置する当時の運河沿いに工房(ボッテーガ)が集中しており、19世紀初頭は職人の多い活動拠点のような場所だったことが明らかとなった。現在は陸化され、レストランや土産物屋が並ぶ観光客にとってのメイン通りとなっている。そのほか元宗教施設、飲食店(オステリア)、造船所、畑などの位置も把握し、ブラーノのかつての姿を解き明かしつつある。住宅においては、高級住宅(Casa superiore di propria abitazione)、持ち家(Casa di propria abitazione)、賃貸住宅(Casa d’affitto)なども把握することができる。これらの住宅がどのような位置にあるのかを把握し、ブラーノ全体の空間構造の分析を進める。 ⅱ)テッラフェルマからヴェネツィア周辺に注ぐ河川・運河の流域においては、エウガネイ丘陵周辺を調査した。 とくにモンテグロット・テルメ(Montegrotto Terme)では、古代ローマに存在した都市の上に現在の都市が形成されている事実を把握した。温泉地という機能を現在も引き継いでいることが明らかになった。調査に対する市長のコメントが地元の新聞に取り上げらた。次年度も調査予定である。 また、デーゼ川流を調査し、生産拠点であることが明らかになった。デーゼ川流域では、1800年頃の地図を用いて、当時水車の設置されている場所を調べた。現在、B&B Mulino Orso Bianco、Hotel Antico Mulinoなどには、水車小屋の遺構があり、ヒアリングからかつての様子をうかがい知ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究が遅れている背景には、2018年4月から所属が変わり、研究環境が大きく変化したことで、これまでの研究環境とは大幅に変わったことが挙げられる。 具体的には、PC、大判スキャナー、大判プリンターなどのこれまでの環境とは大きく違うため、2019年度は大学の協力を得ながら、少しずつ研究環境を整える予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後も現地調査や資料収集を行い、各分野の専門家と情報交換を行いながら考察を進める。 ⅰ)ラグーナ全体: a.治水事業:19世紀、フランス及びオーストリア政府下で行われた治水事業を把握し、考察する。/b.漁業、農業、狩猟:現地調査を通して養魚場および狩猟場(ヴァッレ・フィゲーリなど)、農場のあるサンテラズモを取り上げ、形成過程を明らかにする。/c. 宗教、検疫、軍事、娯楽機能などを受け入れてきた島々:史料収集及び現地調査を行う。/d.開発の変遷:マルゲーラ工業地帯の変遷を把握し、ヴェネツィアとの関係を考察する。 ⅱ)テッラフェルマからヴェネツィア周辺に注ぐ河川・運河の流域: ピアーヴェ川流域、シーレ川流域、ブレンタ川流域:重要な都市の形成過程を考察する。19世紀以降の舟運状況を把握し、ヴェネツィアとの関係を考察し、地域の変化を明らかにする。ヴェネツィアとの関係では、メストレ(Mestre)を重点的に掘り下げる必要がある。/バッキリオーネ川流域:エウガネイ丘陵の石材のほかに、砂やレンガなどがどのルートで運ばれてくるのかを把握し、舟運による地域形成を考察する。19世紀以降については、河川航行博物館博物館の史料を用いて考察を進める。 以上、一連の研究成果を学会などで発表し、報告書をまとめる。
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