研究課題/領域番号 |
17K14893
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
阿部 一徳 秋田大学, 国際資源学研究科, 助教 (50746782)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 石油増進回収法 / 資源開発 / 低濃度塩水 / 貯留層特性 / 濡れ性 |
研究実績の概要 |
本研究では、低塩分濃度水攻法の油増進メカニズム解明に向けて、貯留岩コアを用いた掃攻試験を行い、低塩分濃度水中のイオン成分が貯留岩の表面状態または貯留層特性に及ぼす影響を明らかにする。平成29年度は、模擬貯留層として貯留岩にベレア砂岩、水相にNaCl水溶液(30,000ppm)、油相にn-デカンを使用し、温度60°C下において低塩分濃度水による油掃攻試験を実施した。低塩分濃度水は10,000ppm以下に調整し、低塩分濃度水中の各イオン成分(Ca2+、Mg2+、K+、等)の濃度依存性を検討した。掃攻試験において、低濃度塩水中のCa2+濃度の増加に伴う、コア上流下流における圧力差の上昇、油回収量の向上を確認した。次に、貯留岩の表面状態及び貯留層特性の評価から、塩水中のイオン成分と油増進効果の関係について検討した。表面状態の評価指標として濡れ性に着目し、大気圧下かつ流体温度60°Cにおいて、掃攻試験と同様の模擬地層水を用いて砂岩を飽和し、油との接触角測定を実施した。掃攻試験と同様にCa2+濃度の増加に伴い、貯留岩表面における水濡れ性の増加傾向が観測され、イオン成分・濡れ性・油増進回収量の相関関係が示唆された。相対浸透率曲線からは、水飽和率の比較的低い領域において、塩分濃度の減少及び2価イオン濃度の増加による、油有効浸透率の向上を確認した。油回収量向上の要因の一つとして、負に帯電した砂岩表面に正のイオン(Na+、等)が吸着し、その一部とCa2+によるイオン交換が行われ、貯留岩表面の水濡れ性が増加することで、卓越流路の油有効浸透率の向上が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コア分析は計画通りに進捗し、定常法を用いて各低濃度塩水における相対浸透率曲線も得られている。また、油掃攻試験及び濡れ性の実験結果より、低濃度塩水中のイオン成分・濡れ性・油回収量の相関関係が示唆されている。平成30年度以降は、これらの結果を基に、塩分濃度及びイオン成分の条件を絞りデータを収集することで解析精度の向上を図る。一方で、X線光電分光法を用いた、岩石表面における化学結合状態の解析については、対象試料の積算強度が低く測定精度が十分でない。今後は岩石表面の評価を実施する際の表面処理を検討する必要がある。また、岩石による測定が困難な場合は、解析領域における主要鉱物の非結晶基板を用いた測定も検討する。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、砂岩及び炭酸塩岩貯留層を対象とした、相対浸透率測定及び濡れ性評価を実施し、低濃度塩水圧入による油増進メカニズムについて検討する。岩石試料の基礎特性として、ガス浸透率測定、孔隙率測定、含有鉱物分析を行う。また、水銀圧入法による岩石中の細孔径分布、毛管圧力の測定を実施することで、油増進メカニズムの考察に適用する。 炭酸塩岩コアを用いた油掃攻試験では、平成29年度の砂岩コアを用いた掃攻試験結果を基に、塩分濃度及び塩水中イオン成分の依存性を検討し、コア上流下流における圧力挙動、及び油回収量を測定する。相対浸透率曲線では、有効浸透率や残留油飽和率の変化を確認しながら、油掃攻試験及び考察を進める。また、炭酸塩岩を各塩水で飽和し、油の接触角を測定することで濡れ性を評価し、含有鉱物・濡れ性・塩水成分の関係について検討する。砂岩貯留層を想定した実験では、平成29年度の結果を基に、油増進回収に有効な塩分濃度及びイオン成分に焦点を絞り、各種パラメータの相関関係を明らかにする。また、模擬貯留層の塩分濃度にも着目し、圧入流体との塩分濃度差を検討することで、適用可能な油層条件について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に、X線回折測定による砂岩の含有鉱物分析を実施する予定であったが、次年度に購入予定の炭酸塩岩と合わせて測定を行うこととしたため、未使用額が生じた。このため、砂岩の含有鉱物分析は次年度行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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