研究課題/領域番号 |
17K15003
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
成瀬 美衣 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (80549923)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | オルガノイド / がん / エピゲノム |
研究実績の概要 |
次世代細胞培養法の一つであるオルガノイド培養は、生体内の臓器・組織を反映したモデル系として注目されている。本研究課題では、正常組織よりオルガノイドを作製し、ゲノム編集を用いた遺伝子改変技術により多段階発がん機構を培養下で再現し、エピゲノム変化の経時的な比較を行なう。これにより、従来の細胞培養系では困難であった発がん過程でのゲノムインプリンティングを始めとしたエピゲノム変化を培養下で再現し、さらに個体の解析では影響を及ぼす遺伝子変化以外の環境要因(個体の栄養条件、がん細胞の周辺細胞との関係)を除去することで、多段階発がん過程におけるエピゲノム変化を詳細に明らかにすることを目的とする。 本研究はマウスを用いた基盤研究であり、マウスを用いる利点を最大限に生かす計画である。がん研究でメチル化解析は行われているが、親由来のゲノムを分けてがんの発生過程から経時的にエピゲノム解析をした例はなく、本研究ではC57BL/6マウスとJF1の交配により作成したF1マウス(以降F1 (C57BL/6 x JF1)マウス)を用いるオルガノイド作成を基本とし、C57BL/6、JF1間の多型を利用しエピゲノムの変化、さらには片親性制御機構の変化も解析を行う。そこで、本年度はJF1マウスを導入し、本研究の基盤となる実験系の準備を行った。また、本研究ではがん細胞のエピゲノム解析を経時的に解析することを特色とする。そのため、がん化の過程でがん抑制遺伝子やがん遺伝子に変異が蓄積されていく多段階発がん過程が知られる大腸がんの発がん過程をゲノム編集技術を用いた遺伝子改変技術で再現する。遺伝子に一つ変異を導入する毎にエピゲノムの状態を解析することは本研究課題が初めての試みであり、発がんメカニズムについて重要な知見が得られると確信している。本年度においては、ゲノム編集技術に必要な発現ベクターの作製を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を効果的に推進するため、F1 (C57BL/6 x JF1)マウスより作製したオルガノイド系を用いてがんの発生過程から経時的にエピゲノム解析を行なう。C57BL/6、JF1間の多型の利用により、インプリント遺伝子群の片親性発現を解析可能となることで、環境要因に敏感に反応し、LOIを起こすインプリント遺伝子のエピゲノムの変化を解析できる点である。また、ゲノム編集技術を用いて、遺伝子に一つ変異を導入する毎にエピゲノムの状態を解析することは本研究課題が初めての試みである。これらの本研究の基盤となる研究材料、技術の利用のため、本年度はJF1マウスの導入及び、オルガノイドでのゲノム編集を行う為の、発現ベクターの作製及び条件検討を概ね計画の通り行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
野生型オルガノイドに対して、ゲノム編集により遺伝子変異を導入すし、遺伝子変異導入ごとにそのエピゲノムの変化を経時的に解析を行う。野生型オルガノイド(コントロール)とゲノム編集済みオルガノイドより、ゲノムを抽出し、バイサルファイト処理を行い、Igf2を含む既知のインプリンティング遺伝子のDMRおよび、Apc, p53, Krasのプロモーター領域のDNAメチル化解析をSangerシーケンスにより行ない、多段階発がん過程におけるエピゲノムのプロファイルを作製し、大腸がんの指標となりうるメチル化、インプリントDMRが存在するのかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物の導入が予定より遅れたため、予定していたオルガノイド樹立数まで達せず関連する消耗品の使用が減ったため、次年度使用額が発生した。次年度に予定数までの樹立を行うため、該当額を使用する。
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