研究実績の概要 |
三次元細胞培養法の一つであるオルガノイド培養法は正常上皮から幹細胞を含む種々の分化段階の細胞を長期的に培養可能にし、生体内の臓器・組織を反映したモデル系として創薬開発への利用も期待される。これまでに申請者らは、正常上皮オルガノイドを用いた遺伝子再構成によるin vitro 発がん系の構築、in vitro 化学発がん系の構築(Naruse M., et al., 2020)を行い、オルガノイド培養法が発がん過程を再現可能であることを示した。この系は整った培養条件下で上皮細胞(がん細胞)間の相互作用を再現することで、生体内条件を良く再現した状態で遺伝子変異、遺伝子発現量、エピゲノム変化等の微細な変化を検出可能であると思われるが、実際にどの程度エピゲノムが維持されているのかは不明であった。そこで、亜種にあたるC57BL/6マウスとJF1マウスの交配により得られたF1マウスの臓器とそれより樹立したオルガノイドのメチル化状態を比較し、インプリンティング遺伝子のDMRといった父母由来で精密にメチル化が維持されている領域についてもオルガノイドは元組織と同じメチル化状態であることを明らかにした。また、それについて一部の遺伝子ではなく、全ゲノムについて明らかにするため、2019年度に先進ゲノム支援の支援課題として、バイサルファイト全ゲノムシーケンス による解析を進めるといった、当初の予定に追加した計画も行うことができた。
|