本研究ではキノコ(担子菌)への遺伝子導入や遺伝子破壊に挑戦した。これらの技術基盤を用いて生物活性物質の創製や生合成解明に向けた研究は国内外においてもほとんど認められない。それほどキノコの遺伝子操作は(特に化学者にとって)一般的で容易な技術ではないのである。異分野の研究協力者の助けを借り、失敗するリスクの高い研究内容に挑戦した。本研究にてキノコの形成・成長に関与する新規化合物Aが発見された点は特筆すべきである。今後、本新規化合物のキノコ形成に対する作用点の解明が進むことで効率的なキノコ栽培法の樹立が、さらにはマツタケなど現時点で栽培不能なキノコ種についても栽培化への道が拓かれることが期待される。
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