本研究は平成30年度以降はボリコナゾールについては患者を対象とした皮膚障害の評価とNオキシド体濃度との関係性について解析、その結果から皮膚障害中毒域の探索を行うこととしていた。一方で、ボリコナゾールによる皮膚障害の評価は、機序的にも紫外線下で発現しうるものと考えられ、入院患者を対象とする本試験では評価が困難であることが考えられた。よって、一昨年度よりボリコナゾールの皮膚障害については発現機序の解明に特化したin vitroの研究も加えて評価していくこととしている。 令和2年度から、ケラチノサイトを用いたin vitroの実験を進めると共に、LC-MS/MSによるボリコナゾール及び代謝物、その関連物質の同時測定法の確立を進めていた。 in vitroの実験では、Nオキシド体から得られる光分解物に熱を加えることにより得られる分解物(熱分解物)が、ボリコナゾールのヒドロキシル体であることが分かったため、その標品を合成し、ケラチノサイトへの忍容性試験を実施した。これにより、ケラチノサイトのヒドロキシル体濃度の適用限界は30μg/mLまでであることを確認した。 またLC-MS/MSによる測定については、ボリコナゾール、Nオキシド体、ヒドロキシ体を同時測定できる系の確立を進め、バリデーションも完了し、系を確立させた。 ポサコナゾールについては令和2年4月になり上市されたが、自施設の抗真菌薬のフォーミュラリーとして、正規の採用薬とはしない方針となっており、必要症例数を集めることは困難であると判断したため評価対象外としている。
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