研究課題
多発性硬化症(MS)は病勢の違いにより進行型と再発寛解型に分類され,再発寛解型の多くの症例はのちに進行型へと移行する。再発寛解型 MS の治療や病態の解明は進んでいるが,進行型 MS の病態は不明な点が多く,治療薬の開発も遅れている。本研究では,我々が確立した二つの進行型 MS 動物モデルを多変量解析手法の一つである主成分分析(PCA)を中心に用いて解析し,病態に関与するバイオマーカーの探索を行った。平成 29 年度は,二つの進行型 MS 動物モデルの中枢神経系(CNS)において免疫関連遺伝子の発現に違いを見出し,MS 病勢の進行機序は個々の患者で異なるため有効な治療薬の欠如に繋がっていることを示唆した。平成 30 年度は,二つの進行型 MS 動物モデルの脾臓における網羅的遺伝子発現の解析を行い,そのデータを PCA にて多変量解析することで両デルに共通する末梢バイオマーカーの同定を試みた。その結果,脾臓サンプルにおいてカテプシン阻害物質 Stfa2l1,トリプシン Try5 と Try10 などの遺伝子発現の増加に加えて,Gypa,Kel,Rhd,Cldn13 などの赤血球関連遺伝子の減少が両モデルの病態に関わる共通因子であることを見出した。つまり,これらの遺伝子発現の増減が進行型 MS に共通する末梢バイオマーカーとなる可能性を示した。令和元年度(平成 31 年度)は,進行型および再発寛解型 MS 動物モデルの CNS を病理学的に比較検討した結果,進行型 MS 動物モデルの CNS では脱髄病変と軸索変性が共に悪化していた。また,軸索変性は脱髄病変部位だけでなく,まだ炎症の起きていない定常状態の髄鞘部位にも見られた。軸索変性が先行し脱髄病変が誘導されることが報告されていることから,進行型 MS 患者では CNS において負のスパイラルが生じている可能性を示唆した。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (5件)
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