研究課題
濾胞制御性T細胞 (follicular regulatory T cells: TFR細胞)は、制御性T細胞 (regulatory T cells: TREG細胞)がB細胞濾胞へ移行する能力を獲得し分化した 細胞集団である。機能として、胚中心反応におけるTFH細胞を介した免疫応答を抑制し、自己抗体やIgE抗体の産生を抑制する。従って、TFR細胞は自己免疫疾患やアレルギー疾患の発症を防ぐ上で重要な役割を持つと考えられている。 申請者はこれまでの研究から、腸内細菌が食物繊維を資化して産生する短鎖脂肪酸の1つである酪酸が、マウスの自己免疫性関節リウマチモデルの発症を抑制する事を見出している。さらに、この酪酸による間接リウマチモデルの発症抑制には、TFR細胞を増加が関与している事が示唆された。2020年度の研究から、酪酸がヒストンデアセチラーゼ (histone deacetylase: HDAC)のアイソザイムであるHDAC2を特に強く阻害する事を見出した。そこで酪酸の代わりに、新規HDAC2特異的阻害剤を自己免疫性関節リウマチモデルに投与したところ、その発症を抑制する事を見出した。さらに、TFR細胞分化誘導培養系にこのHDAC2の選択的阻害剤を添加したところ、TFR細胞の分化を強力に誘導した。これらのことから、酪酸はHDAC2アイソザイムを阻害する事で、TFR細胞の分化誘導を促進し、自己免疫性関節リウマチモデルの発症を抑制している事が示唆された。さらに、新規にT細胞特異的HDAC欠損マウスを作出したところ、TFR細胞の分化が顕著に促進される事を見出している。この事から、HDAC2の発現を阻害することが、TFR細胞の分化に重要な役割を果たしている可能性を見出した。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
Nat Commun
巻: 12 ページ: -
10.1038/s41467-021-22212-1
bioRxiv
巻: - ページ: -
10.1101/2020.09.30.317628
Arch Biochem Biophys
巻: 693 ページ: 108557
10.1016/j.abb.2020.108587
EBioMedicine
巻: 58 ページ: 102913
10.1016/j.ebiom.2020.102913