血液中のチオ硫酸塩濃度は硫化水素中毒の指標として注目されている。本研究では従来のGC-MSによる測定法に代わるLC-MS/MSによるチオ硫酸塩濃度測定法を確立し、3種の検体(血液・尿・心嚢液)について死後腐敗によるチオ硫酸塩濃度の変化を調査した。硫化水素中毒ではない場合でも3種の検体とも腐敗事例では高濃度のチオ硫酸塩が検出されることが多く、腐敗していない場合の硫化水素中毒事例と同等のレベルで検出されることが多かった。この結果から硫化水素中毒診断の指標としてチオ硫酸塩を用いる場合には腐敗の影響を十分に考慮する必要があることが示された。
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