本研究の結果から、ピロリ菌CagAはE-cadherinのチロシンリン酸化状態を変化させることにより胃上皮細胞間の接着構造に影響を与えることが強く示唆された。上皮細胞間の接着構造の乱れは、その構造が持つ生理学的な意義から、様々な胃粘膜病変の発症につながることが予想される。年間70万人が胃がんで命を落としている現状において、その予防法・治療法開発は急務である。予防としてはピロリ菌の除菌が有効ではあるが、腸上皮化生まで進行した段階での除菌は発がんリスクに影響しないとも言われる。本研究の成果は、ピロリ菌除菌では既に対処できない発がんの阻止や新たな胃がん治療法開発の上で重要な意義を持つ可能性がある。
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