ミトコンドリアのクリスタは必要に応じてその形態を変化させることが知られており、またその構造変化と一致して活性酸素種産生増加や呼吸能低下をひき起こすことが知られており、ミトコンドリアの形態と機能の間には強い関連があることが示唆される。クリスタの襞構造を裏打ちするMICOS複合体はミトコンドリア内膜の境界膜とクリスタをつなぐクリスタ接合部に存在し、内膜のMICOS複合体と外膜タンパクとの直接的な相互作用が注目されている。ミトコンドリア外膜に局在するタンパクの一つで、生体内で反応の中心となる鉄硫黄中心を有する特長をもつmitoNEETを候補として想定した。 in vitroのレベルでmitoNEETタンパクの過剰発現系における免疫沈降後の検体を用いて、mitoNEETと相互作用を有するタンパクの候補として、ミトコンドリア内膜タンパクの一つであるmitofilinを同定した。さらにin vivoでも同様の検討を行ったところmitoNEETとmitofilinが内因性に相互作用を有することを確認した。 心筋特異的mitoNEET欠損マウスの心筋におけるミトコンドリアの電子顕微鏡像では、クリスタ構造は崩壊し形態学的な異常を呈していた。高感度ミトコンドリア呼吸測定装置を用いた呼吸能の評価では、mitoNEET欠損マウスおけるミトコンドリアの機能障害は明らかであった。形態異常が先行して機能異常が続発するものと示唆された。 今後、心不全モデルを用いて病態におけるmitoNEETの役割の解析を継続する。それにより心不全モデルマウスへのmitoNEETへの介入による、新たな心不全予防・治療法の開発を進める予定である。
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