遺伝子解析と骨格筋組織を用いたトランスクリプトーム解析を行うことで、封入体形成と骨格筋変性に関わる病因分子および治療標的分子を明らかとすることを目的として、H29年度~H30年度には疾患関連レアバリアント抽出のための次世代シークエンサーを用いたゲノム解析データを得ている。その中で未診断である5症例の遺伝性IBM症例を対象として、疾患関連リピート配列構造の検出のため、H31年度は遺伝性IBM3例にナノポアシークエンサーを用いた全ゲノム長鎖シークエンスを行った。それぞれの症例については、解析に値するデータ量が確保され、得られた配列情報をもとに情報解析を施行、リピート配列の抽出を行った。H30年度に行った生検骨格筋を用いたトランスクリプトーム解析結果との照合により疾患関連リピートの絞り込みを行った。また新たに、遺伝性IBMの3症例を含む12症例の編入を行い、疾患関連レアバリアント抽出のためのターゲットリシークエンス解析を行った。 これらの解析により、3例に既知の遺伝性IBM関連変異を検出、その他の症例には未診断ながら、24のレアバリアント、27の新規バリアントを確認した。また骨格筋組織RNAのトランスクリプトーム解析を行い、遺伝性IBM群とコントロール群との比較において、発現量に関して有意差のある39遺伝子を抽出した。今後、上記までの解析から検出した病因候補分子について、罹患者骨格筋組織における局在と凝集体形成の有無を免疫組織化学にて、蛋白量変動についてウェスタンブロッティングにて確認を行い、病因分子の最終的な絞り込みを行う。
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