研究課題/領域番号 |
17K16345
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
宮下 梓 熊本大学, 医学部附属病院, 病院教員 (20467989)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 進行期悪性黒色腫 / 新規免疫細胞療法 / iPS細胞 / 細胞増殖シグナル経路 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究で、作製したマウスiPS-ML-IFNβ、マウスiPS-ML-IL-15Ra(マウスiPS細胞由来のミエロイドライン(iPS-ML)に、レンチウイルスベクターシステムを用いて、抗腫瘍効果を高める分子であるIFN-β、IL-15Ra遺伝子を導入し、抗腫瘍効果を持たせた細胞)を用いて、マウスメラノーマ細胞に対する抗腫瘍効果の検討を行い、マウスメラノーマ腹腔内播種モデルにおいて、マウスiPS-ML-IFNβ、iPS-ML-IL-15Raの腹腔内治療が未治療群と比較し腫瘍増殖抑制効果があることが確認できた。よって、平成30年度はさらに、この得られた抗腫瘍効果の機序についての評価を行った。 マウスiPS-MLに遺伝子導入したIL-15はNK細胞を活性化できることがいわれており、さらにNK細胞は、MHC classⅠの発現が低下した腫瘍細胞を攻撃できることがいわれている。実験系としては、免疫系が正常なマウス(B6マウス)に同系統の腫瘍(B6マウスメラノーマ細胞)を腹腔内へ移植したマウスをiPS-ML-IL-15Raで治療することで、マウス(host)の体内のNK細胞が活性化され、そのNK細胞が腫瘍細胞に対する抗腫瘍効果を発揮している可能性が考えられるため、この機序を確認するためのin vivo primingによるNK細胞の細胞障害アッセイを行い、NK細胞の活性化がみられるかを検討した。 マウスiPS-MLをコントロールとして、iPS-ML-IL-15Raを腹腔内に投与後、脾臓内のNK細胞を取り出し、Yac-1細胞を用いたLDHアッセイで評価した。 iPS-ML-IL-15Ra投与群ではiPS-ML投与群と比較し、有意にNK細胞障害性の上昇が認められた。この結果は、iPS-ML-IL-15Ra治療による抗腫瘍効果の機序の解明の一助になると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスiPS-ML-IFNβ、iPS-ML-IL-15Ra治療のマウスメラノーマモデルにおける抗腫瘍効果が確認できたことに加え、その効果の機序を解明すべく、in vivo primingによるNK細胞の細胞障害アッセイを行い、NK細胞の活性化がみられるかを検討することができたこと、などが理由である。
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今後の研究の推進方策 |
このiPS由来の免疫細胞療法が将来において臨床応用された場合は、allogeneic(HLA適合の他者)なiPS-MLを用いる方法が想定される。HLAを適合させたallogenicなiPS-MLを用いれば、投与直後にはホストの免疫機序によって排除はされず、抗腫瘍効果を発揮した後に、マイナー組織適合抗原に対するホストの免疫反応により拒絶されると考えられ、iPS-MLの腫瘍化は回避できると考えられるからである。このことを確認するために、B6マウスをallogenicなマウスiPS-MLで治療し、腫瘍化がないかを評価する予定である。
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