平成29年度は、マウスiPS細胞由来のミエロイドライン(iPS-ML)に、レンチウイルスベクターを用いてIL-15Ra遺伝子等の抗腫瘍効果を高める分子の遺伝子を導入し、抗腫瘍効果を持たせた細胞(iPS-ML-IL-15/Ra等)を作製し、これらの細胞を用いてマウスメラノーマに対する抗腫瘍効果を検討した。実験系は、免疫系が正常なマウス(B6マウス)に同系統の腫瘍(B6マウスメラノーマ細胞)を腹腔内へ移植し生着を確認した後、B6マウスiPS-MLを用いて治療(腹腔内投与)した。腫瘍増殖抑制効果の評価にはルシフェラーゼ定量システムを用いた。実験の結果、iPS-ML-IL-15/Ra等で治療した群では未治療群と比較し腫瘍の増殖を抑制できることが確認できた。 平成30年度は、腫瘍増殖抑制効果の機序について評価した。実験系は、iPS-ML-IL-15/Raで治療したマウスの体内のNK細胞が活性化され腫瘍増殖抑制効果を発揮している可能性を確認するため、in vivo primingによるNK細胞の細胞障害解析を行った。iPS-MLを対照としてiPS-ML-IL-15/Raを腹腔内に投与後、脾臓内のNK細胞を取り出しYac-1細胞を用いたLDHアッセイで評価した。実験の結果、iPS-ML-IL-15/Ra投与群ではiPS-ML投与群と比較し有意にNK細胞障害性の上昇が認められた。 令和元年度は、治療で用いる細胞の腫瘍化について検討した。実験系は、将来的に臨床応用された場合はallogeneic(HLA適合の他者)な細胞を用いることが想定されるため、B6マウスのallogeneicな系として129マウスES-ML(129マウスES細胞より作製したミエロイドライン)、129マウスES-ML-IL-15/Raを用いて評価した。実験の結果、これらの細胞で治療したマウスにおいて死亡例は認められなかった。
|