不安定な1型糖尿病の治療法として近年日本でも膵島移植が注目されている。膵島移植は門脈を介した移植のため、膵臓移植と比べて非常に侵襲性の低い細胞移植療法であり、欧米ではすでに標準的な治療法となっている国もあり、また日本でも近々保険適用された治療になる予定である。一方で、膵島移植の課題の一つに門脈注入後の低い膵島の生着率があり、その原因・メカニズムの解明が必要であるが、門脈注入後は移植された膵島を直接観察できなくなることが大きな障害になっている。そこで、近年大きな発展を遂げている臓器の透明化技術に着目し、センチメートル単位で観察可能なシートレーザー蛍光顕微鏡と併せて用いることで、マウスの肝臓内部を可視化し、マクロ視野および微細構造の双方で3次元構造を保ったままで詳細な観察が可能になった。本研究では移植後膵島を3次元的に観察し、膵島の全体分布、生着、炎症、血管新生、免疫反応、膵島数の増減を経時的に検証を行う予定である。 これまでの実験手技の改良によって、効率的な膵島単離及び移植、移植した臓器の透明化が可能になった。また「透明化臓器の免疫蛍光染色」に関しても染色法を確立し、特に血管の染色において強い再現性を得ることができるようになった。現在、当初の研究目的としている移植した膵島の全体分布、生着、膵島数の増減などを検証中である。一方、肝臓一葉レベルの大きさだと当初予定していたシートレーザー蛍光顕微鏡での観察が困難であることが分かったため、マクロレベルの観察ではSD高速共焦点顕微鏡の使用を検証している。
|