研究実績の概要 |
本研究において、ヒト大腸がん株 SW480, HCT15, HT29細胞から side population (SP) 細胞を分離した。SP細胞は、免疫不全マウスにおいて高い造腫瘍能を示し、SP細胞はがん幹細胞が濃縮されていた。さらに、SP細胞およびmain population (MP)細胞からクローン細胞を樹立し、安定的ながん幹細胞および非がん幹細胞株とした。我々が樹立した安定したがん幹細胞株 SP クローン細胞および非がん幹細胞株 MP クローン細胞を用いて、大腸癌の可塑性について検討を進めた。我々は最近研究において、ストレス環境下において、がん幹細胞を可塑性に誘導する事を見出した(Kusumoto et al., Cancer Sci 2018)。そこで、大腸癌の可塑性においても、ストレス応答分子が関わっている可能性を考え、ストレス応答分子を網羅的に検索した。その結果、大腸癌幹細胞(SPクローン細胞)には、ストレス応答分子の中でも熱ショックタンパク 90 (HSP90)分子発現が高い事を見出した。さらに、HSP90リコンビナントタンパクをMP細胞に添加する事により、SP細胞様に変化する事を見出した。本研究結果は、大腸癌幹細胞には HSP90 分子が過剰発現しており、大腸癌幹細胞に発現するHSP90 分子が大腸癌可塑性に関わる事を示唆する。しかしながら、HSP90分子がどのように細胞外に分泌されるか、HSP90分子がどのように可塑性に関わるかさらなる疑問点が多く、今後の検討課題とする。
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