KIRリガンドミスマッチによる腎移植後悪性腫瘍発症抑制効果の検討

2018 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 17K16773
• 研究機関: 秋田大学
• 研究代表者: 藤山 信弘 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (90603275)
• 研究期間 (年度): 2017-04-01 – 2020-03-31
• キーワード: 腎移植 / 移植後悪性腫瘍 / HLA / KIR / NK細胞

研究実績の概要

KIRリガンドミスマッチ腎移植ではKIRリガンドマッチ腎移植と比較して、グラフトを自己と見なすことができずにNK細胞は活性化を受けやすい状態となり、感 染症や悪性腫瘍に対する抵抗力を保持できる可能性がある。 この仮説に基づき、KIRリガンドミスマッチの有無による腎移植後悪性腫瘍の発症率を比較したところ、KIRリガンドマッチ群15%に対し、KIRリガンドミスマッ チ群4％と有意な差が認められた（p＝0.026）。この結果を受けて、腎移植後悪性腫瘍リスクとKIRリガンドミスマッチの関係を明らかにするために、はじめに腎移植レシピエントからPBMCを検体の採取と遺伝子解析を進めている。
悪性腫瘍発症15例を含む生体腎移植患者98名よりPBMCを採取した。そのうち53名のKIR遺伝子を次世代シークエンサーにて決定し、活性型KIRを1種類しか持たないAタイプのホモ接合体が30名、活性型KIRを2種類以上保持するBタイプとAタイプのヘテロ接合体が23名で あった（Bタイプのホモ接合体は現時点で0名）。また、活性型KIR遺伝子を1個有するcA01/tA01タイプが30名、2個有するcB02/tA01タイプが5名、4～5個有するcA01/tB01またはcB02/tB01タイプが18名であった。
PBMCを用いたNK細胞活性を評価したところ、悪性腫瘍発生群と非発生群の比較では発生群で有意に低く（7.5％vs27.9％）、KIRリガンドミスマッチの有無で比較すると有る方が高い傾向が見られた（28.1％vs15.1％）。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

臨床的な免疫抑制療法のNK細胞幼若性への影響を評価するために、新規の生体腎移植患者の移植前から移植後に至る経時的な変化を評価する系を追加したため。

今後の研究の推進方策

KIRリガンドミスマッチ腎移植群が45例で、目標症例までとなるまで検体採取を継続する。 KIR遺伝子及びHLA遺伝子タイピングは全例に対して行い、その遺伝情報に基づいてフローサイトメトリーによるNK細胞レパートリーの解析する。NK細胞レパートリー評価に関しては、シンガポール大学との共同研究で進める。

次年度使用額が生じた理由

K細胞レパートリーの解析及びNK細胞活性能の解析はすでに進めているが、費用請求が昨年度中に間に合わず、支払いが未執行のため。

研究成果

• [国際共同研究] シンガポール国立大学(シンガポール)
  • 国名: シンガポール
  • 外国機関名: シンガポール国立大学
• [雑誌論文] A Nationwide Survey of Hepatitis E Virus Infection and Chronic Hepatitis in Heart and Kidney Transplant Recipients in Japan (2019)
  • 著者名/発表者名: Yohei Owada, Yukio Oshiro, Yuki Inagaki, Hiroshi Harada, Nobuhiro Fujiyama, Naoki Kawagishi, Takashi Yagisawa, Joichi Usui, Naotake Akutsu, Yoshihiro Itabashi, Kazuhide Saito, Yoshihiko Watarai, Naotsugu Ichimaru, Ryoichi Imamura, Miyaji Kyakuno, Kentaro Ide, Yuichi Shibuya, Yasuhiro Okabe, Minoru Ono, Konosuke Sasaki
  • 雑誌名: Transplantaion 巻: In press ページ: In press
  • 査読あり
• [雑誌論文] Clinical implications of pharmacokinetics of sunitinib malate and N-desethyl-sunitinib plasma concentrations for treatment outcome in metastatic renal cell carcinoma patients (2018)
  • 著者名/発表者名: Numakura Kazuyuki、Fujiyama Nobuhiro、Takahashi Makoto、Igarashi Ryoma、Tsuruta Hiroshi、Maeno Atsushi、Huang Mingguo、Saito Mitsuru、Narita Shintaro、Inoue Takamitsu、Satoh Shigeru、Tsuchiya Norihiko、Niioka Takenori、Miura Masatomo、Habuchi Tomonori
  • 雑誌名: Oncotarget 巻: 9 ページ: 25277-25284
  • DOI: 10.18632/oncotarget.25423
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Contribution of UGT1A1 genetic polymorphisms related to axitinib pharmacokinetics to safety and efficacy in patients with renal cell carcinoma (2018)
  • 著者名/発表者名: Igarashi Ryoma、Inoue Takamitsu、Fujiyama Nobuhiro、Tsuchiya Norihiko、Numakura Kazuyuki、Kagaya Hideaki、Saito Mitsuru、Narita Shintaro、Satoh Shigeru、Niioka Takenori、Miura Masatomo、Habuchi Tomonori
  • 雑誌名: Medical Oncology 巻: 35 ページ: 51
  • DOI: 10.1007/s12032-018-1113-8
  • 査読あり
• [学会発表] Evaluation of complement-related factors in TMA post-kidney transplantation: A retrospective multicenter study (interim analysis) (2019)
  • 著者名/発表者名: Nobuhiro Fujiyama, Masayuki Tasaki, Hiroshi Harada, Koichi Tsutahara, Akihiko Matsumoto, Yuta Hara, Masayoshi Okumi, Kazuhide Saito, Yoshihiko Watarai, Norimitsu inoue, Nobutaka Wakamiya, and Shigeru Satoh
  • 学会等名: 2019 American Transplant Congress
  • 国際学会
• [学会発表] 腎移植後サイトメガロウイルス感染とHLAの相関性 (2019)
  • 著者名/発表者名: 藤山信弘、三浦アヤ子、齊藤満、山本竜平、齋藤拓郎、沼倉一幸、井上高光、奥山慎、羽渕友則、佐藤滋
  • 学会等名: 第52回日本臨床腎移植学会
• [学会発表] Immunosuppressant related to de novo donor specific HLA antibody production in post kidney transplantation (2018)
  • 著者名/発表者名: Nobuhiro Fujiyama, Mitsuru Saito, Ryohei Yamamoto, Kazuyuki Numakura, Shin Okuyama, Takamitsu Inoue, Tomonori Habuchi, Shigeru Satoh
  • 学会等名: The Transplantation Society (2018) Madrid
  • 国際学会
• [学会発表] 腎移植後TMA患者の補体関連因子を評価する後向き多施設研究（中間報告） (2018)
  • 著者名/発表者名: 藤山信弘、田崎正行、蔦原宏一、松本明彦、原悠太、奥見雅由、齋藤和英、原田浩、渡井 至彦、井上徳光、若宮伸隆、佐藤滋
  • 学会等名: 第55 回 日本補体学会学術集会
• [学会発表] 秋田大学における既存抗体および新生抗体に対する取り組み (2018)
  • 著者名/発表者名: 齋藤 満，佐藤 滋，藤山信弘，山本竜平，齋藤拓郎，米田真也，忠地一輝，下田次郎，奈良健平，千葉修治，神田壮平，沼倉一幸，成田伸太郎，井上高光，羽渕友則
  • 学会等名: 第54回日本移植学会総会
• [学会発表] 腎移植後TMA患者における補体関連因子を評価する多施設共同研究(中間報告) (2018)
  • 著者名/発表者名: 4)藤山信弘、田崎正行、蔦原宏一、松本明彦、原 悠太、奥見雅由、齋藤和英、原田 浩、渡井至彦、井上徳光、若宮伸隆、佐藤 滋
  • 学会等名: 第54回日本移植学会総会