当初、ヒト真珠腫におけるDNAメチル基転移酵素(DNMT)の角化重層扁平上皮細胞増殖への影響を検証するため、申請者の所属機関において真珠腫性中耳炎に対して施行された鼓室形成術にてヒト真珠腫検体を採取し、ヒト検体におけるDNAメチル基転移酵素の発現と臨床的重症度の相関の確認を行い、更には検体から採取した扁平上皮細胞での酵素抑制効果を検証する予定としていた。申請者の所属機関において、2018年度から2019年度にかけて真珠腫性中耳炎に対する鼓室形成術(外耳道真珠腫・鼓室形成術後の医原性真珠腫を除く)は合計32例が施行された。そのうち後天性真珠腫に対する一期的手術および段階的手術の第1次手術が7例、第2次以降の手術が8例、先天性真珠腫に対する一期的および第1次手術が5例、第2次以降の手術が7例、二次性真珠腫に対する一期的および第1次手術が4例、第2次手術が1例であった。当初、年間20例程度の検体採取を見込んでいたが、再発を認めなかった例や微小検体例、検体が角化層のみのものがあり、検証対象となる顆粒層以下の非角化層の上皮を含む検体が12例と大幅に少なく、予定していた研究方法にて有意な結果を得るには不十分と判断し、研究を中断するに至った。今後、詳細な検証を行うためには、検体採取方法の改善により非角化層を多く含む検体の採取が望まれるとともに、多施設で検体採取を行うなど、より多くのヒト真珠腫検体を採取することが必要となると考える。
|