本研究においては、インドネシア・スマトラ島東岸部に暮らす先住民オラン・アスリが暮らす2つの村落において村落長選挙と民主主義に焦点を当てた人類学的研究を行い、彼らの投票の行動選択と村落政治への参画が、日常生活の民族的境界に規定されたものではなく、候補者および村落長との互酬的関係のなかで選択され体験されていることを明らかにした。加えて、現代インドネシア政治における民主主義異的な手続きを通して、逆説的に、かつては非階層的な社会構造であった彼らの社会に、ある種の封建的な階層関係が出現していることを指摘した。
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