本研究は、文化遺産国際協力の中でも、特に昨今、世界各地で増加している日本による博物館援助事業に焦点を当て、文化遺産マネジメントの立場から博物館援助事業の効果的な計画と運営方法について考察した。現地調査、資料調査、関係者への聞き取り調査(現地調査及びオンライン)などを通して、開発援助事業の評価方法と博物館に関する評価方法を比較検証した。その結果、研究開始段階の2017年以前と比べても、開発援助事業の評価方法の中に、文化関連に関するテーマ研究を取り入れる傾向は見受けられないことが、関係者への聞き取りとJICA及び世界銀行の資料をもとに明らかになった。一方で、博物館の評価方法に関しては、プロジェクトサイクルマネジメント等の開発援助事業の評価方法との類似点があり、今後開発援助事業の評価方法を導入できる可能性が、博物館関係者の聞き取りをもとに確認できた。博物館運営における労働状況やコミュニティの参加の推進など博物館分野における現状を加味した上で、開発援助事業評価を試用しその効果を反映するなどの、試験的研究ができるかが今後の課題と考える。コロナ禍では、予定していた現地調査などの遂行は困難であった一方、オンラインで関係者への聞き取りを進めることができるなど、研究手法の多様化を試みることができた。今年度の研究成果については、オンラインミーティングで意見交換を行った。
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