研究課題/領域番号 |
17K17967
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
林 亮輔 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (50634987)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 交通インフラ / スピルオーバー / ヘドニック・モデル |
研究実績の概要 |
本研究はネットワーク性という特徴を有している産業基盤型社会資本である交通インフラに焦点を当て、ネットワークの形成状況とスピルオーバーとの関係性を明らかにすることで、交通インフラ整備の財源調達や広域行政などのあり方を提示することを目的としている。研究初年度である平成29年度は、①文献研究、②文献研究をもとにしたモデルの構築、③実証分析の際に必要となるデータの収集と加工を中心に研究を進めた。①文献研究では、交通インフラ変数を組み込んだヘドニック理論モデル構築のため、Pereiraa and Roca-Sagales(2003)、OECD(2007)など、交通インフラと地域経済に関して記述している文献を中心に文献研究を進めた。また、実証モデルを開発できるよう、高速道路の整備効果をヘドニック・アプローチによって検証しているIacono and Levinson(2009)、Beenstock et al.(2015)などの文献研究を行った。②モデルの構築では、上記の文献を参考にし、わが国の先行研究で行われているDID(Difference in Differences)推定を前提とした実証モデルではなく、地価への帰着の程度や範囲を詳細に分析可能な実証モデル(プロトタイプ)の開発を進めた。③データの収集と加工では、国土交通省『道路交通センサス自動車起終点調査』から法人所有自動車の移動量、GISから都市間の移動距離、出発地と目的地の経済活動規模などのデータを収集し、Lee and Goulias(1996)などを参考に、交通インフラを実証モデルに組み込むためのアクセシビリティ指標の開発を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、九州地域の高規格道路を対象に、①プロトタイプの実証モデルを用いた実証分析を行い、②実証分析結果を検証することで必要に応じて実証モデルを修正し、③実証モデルを確定する段階まで研究を進める予定であった。しかしながら、これまであまり行われてこなかった地価への帰着の程度や範囲を詳細に分析できる実証モデルの構築、実証分析に必要となるデータの収集・加工に時間を要したことから、研究計画からやや遅れた状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、まず始めに、平成29年度の残された課題である「実証モデルの確定」を行う予定である。そして、当初の研究計画通り、研究2年目となる平成30年度は、九州地域の高規格道路を事例として交通インフラ整備が地域経済に与える効果をスピルオーバーの地理的範囲とともに推定する。具体的には、①九州地域における高規格道路の整備状況に応じたネットワークの形成とスピルオーバーとの関係を時系列で推定するために、高規格道路の整備状況に関するデータベースを作成し、マッピングを行う。②整備状況に合わせて、アクセシビリティ指標、その他のコントロール変数についてデータを作成する。③整備状況を複数期間に区切り、期間ごとに実証分析を行い、ネットワーク形成とスピルオーバー(正と負)の関係を推定する。④スピルオーバーの地理的範囲を特定し、交通インフラの地域経済に与える効果を計測する。以上の通り研究を進めることで、最終年度となる平成31年度には、交通インフラ整備の財源調達や広域行政などのあり方について、研究成果を提示する予定である。
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