研究課題/領域番号 |
17K17989
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
小口 悠紀子 首都大学東京, 人文科学研究科, 助教 (70758268)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ねじれ文 / 日本語学習者の作文 / 名詞述語文 / 教材分析 / 作文収集 |
研究実績の概要 |
本研究は,日本語母語話者から見た日本語学習者の日本語能力未発達を疑わせる契機となり得る「ねじれ文」の使用・誤用実態に対する実証的研究である。「ねじれ文」は日本語母語話者にとっても重要な誤用であるという先行研究もあるが,その多くは小中学生期に集中している。日本語母語話者による日本語学習者の日本語能力推定において,「ねじれ文」が多発することでその日本語能力が低く見積もられることは深刻な課題であり,具体的な対策が不可欠である。しかし、日本語教育の分野にとって未だこの問題を体系的に扱った研究はない。 そこで、本研究では、平成29年度に,ⅰ)データ不足を補うための新たな作文の収集と分析と成果の公表を中心に行い、平成30年度のⅱ)誤用になりやすい文要素を特定するための実験的検証に備えた。具体的には、学習者の作文の収集、分析・ねじれ文の分類作業を行い,誤用になりやすい構文・語彙パターンを抽出し、論文執筆を進めた。また、日本語学習者の作文の問題点を調査した研究発表に参加し、研究の動向を確認した。 ただし、平成29年度に扱った作文データのみではトピック等に左右されて出現しない条件があると考えられるため,平成30年度はⅱ)条件を統制した3種類の実験的検討を行い,習得が難しいパターン解明を目指す。またこれらの成果を論文として公表する。 加えて、ねじれ文の問題に影響する要因を探るため、日本語学習者向けの教材分析、及び、学習者の作文にあらわれる文法的な問題の分析を行い、国際学会、論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の計画では、(1)作文の収集、(2)収集した作文,およびコーパスの分析・分類を予定していた。 (1)作文の収集に関しては、申請者は既に台湾(台北市)の日本語教員の協力のもと,中国語母語話者の作文収集を行ったが,同テーマによる英語・韓国語母語話者作文の収集、およびデータ化の作業には遅れが出ている。これは、中国語母語話者の作文に当初想定していた問題が出現しないことが多く、学習者のレベル設定、およびテーマの選択を再度行う必要があったこと、および、学習者作文コーパスが整備されてきていることからそうした外部データの利用を検討する必要があることに起因する。 (2)収集した作文,およびコーパスの分析・分類 既存のコーパス,及び(1)で収集したデータの一部を協力者と共に分析・分類した。ねじれ文とねじれ文が産出されやすい名詞述語文等の正用使用も分類する。その上で,誤用になりやすい構文・語彙パターンを抽出する。この成果については現在論文執筆の段階にある。 上記に加え、課題に関わる日本語教材の分析を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度中に(2)収集した作文,およびコーパスの分析・分類の成果を論文としてまとめ公表する。またこの成果をもとに,複数の手法を用いた実験1~3の課題文作成と予備調査を実施する。続いて、実験1~3を3か国の学習者を対象に実施する。学習者の母語が結果に影響することが想定されるため,異なる言語特性を持つ3か国(中国,韓国,英語)の母語話者に調査を依頼することが必要である。 実験結果の分析を通して,ねじれ文が起こりやすい具体的な構文・語彙を提示する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より海外調査の予定が遅れており、それに伴う「人件費・謝金・物品費」の支出が次年度に見送られたことが計画より支出が少なくなった主な理由である。次年度に海外調査を実施する計画であり、今後、「旅費・物品費」の支出が見込まれるとともに、協力者に対する「人件費・謝金」の支払いが生じる計画である。
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