本研究の目的は、教員の経験に基づくゼミナールの暗黙的な実践知を明らかにすることであった。はじめに、担当教員20名に対するインタビュー調査のデータを分析した。その結果、多くの教員は学生の卒業後を見据え、臨機応変な対応力や行動に対する責任感、基本的な思考力の成長を促すための活動を実践していることが示された。 次に、はじめてゼミナールを担当する新任教員1名とゼミナールの参加学生11名を対象に参与観察を行った。教員が本質的な問いかけを要する課題を実施し、ゼミナール中の議論で学生個々人の考えをすくい上げ続けたことで、固定化した関係がほぐされ、学生同士の密なコミュニケーションが成立するという変容がみられた。
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