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2019 年度 実施状況報告書

学生アスリートのキャリア形成が埋め込まれた社会的文脈に関する国際比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 17K18036
研究機関桜美林大学

研究代表者

束原 文郎  桜美林大学, 健康福祉学群, 准教授 (50453246)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード体育会系神話 / 大卒新卒就職 / 学生アスリート / 初期キャリア形成 / 雇用慣行
研究実績の概要

本年度は,大きく3つの成果を得た.
1つ目は,欧州(デンマーク)におけるエリート競技者育成事業における中央競技団体と自治体,および教育機関の連携について,現地調査を行った.デンマークでは学生アスリートと認定されることで,高校では3年の代わりに4年まで,大学では4年の代わりに6年まで,修業年限を延ばすことを学生アスリート本人の主体性において選べるようにする.その「学生アスリート」として認定を受けるのも,本人による中央スポーツ統括機関や地方自治体の教育委員会への申請がベースになる.本人の申請に基づき,学生アスリートとしての認定を受け,その認定に基づいて,教育現場では一般の生徒・学生と同様の教育内容を享受できるよう融通する.
2点目は,学生アスリートに限定した就職支援業者と共同で,学生アスリートの学業と競技の両立に関する意識及び実態調査を行った.両立意識は入学時の制度よりも,学生アスリートの生活実態によるが,その結果と人気企業からの内定獲得の間に関連はなかった.むしろ人気企業からの内定獲得は大学ランクによるところが大きかった.
3点目は,「日本の大学新卒就職における 「体育会系神話」の成立と変容」を執筆し,早稲田大学スポーツ科学研究科に博士学位申請論文として提出した.現在でも多くの人に共有される体育会系神話が,大正末期から昭和初期にかけて,成長著しい近代企業にとっての望ましい人材イメージと共に確立したこと,戦後から1980年代までは大企業-優良大学間の排他的互恵関係の中で維持されたこと,1990年代以降の社会変容により体育会系が著増し,2000年代以降は体育会系が有利となる条件として高威信大学・伝統的チームスポーツ・男性という条件が浮上していること,それらが戦後を通じて変わらない大企業型の雇用慣行とその周辺で翻弄される高等教育界や企業スポーツ界の制約の中で発現することを指摘した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

豪州の調査が出来ていない.年度末に渡豪し,視察調査を企画しようとしていたが,6月に職員より経理処理停止の通告がなされ,また実際に執行が大幅に遅滞され,計画自体が立てられなかった.

今後の研究の推進方策

今年度は新型コロナウィルスの蔓延に伴う行動規制で,海外での調査が進められるかわからない.そこで,国内で推進可能なことをできるところまで進める.
まず,博士論文「日本の大学新卒就職における 「体育会系神話」の成立と変容」を書籍化する.一般の方にも読みやすい文章に改め,成果を広く社会に還元する.
同時に,学生アスリートを対象とした就職支援業者と共同で,学生アスリートの生活調査を続ける.前回は学業とスポーツの両立に関する調査を行ったが,その結果,家庭の経済資本,文化資本の影響がアルバイトや学生生活に反映され,それが学生アスリートの学業とスポーツの両立の成否を左右しているのではないかと推察された.既に2021年卒の学生を対象にアンケート調査を実施してきており,分析はすぐにでも可能である.就職先と大学ランクに加え,学業,スポーツ,アルバイトといった学生生活の影響を検討し,学生アスリートの学習支援,就職支援の改善に向けた知見としてまとめる.こちらも,共同で研究を進めているメンバーと書籍発刊の準備を進める.分担執筆予定者には打診済みである.
これまでの調査で,日本で多くの人が信じる体育会系神話は,戦前から連綿と続く企業メンバーシップ型雇用の慣行と,その慣行に合わせる高等教育システムの関数であると仮説された.アメリカ,欧州に加え,台湾,豪州との比較で当該仮説の検証を続ける.

次年度使用額が生じた理由

豪州調査ができなくなったため.
新型コロナウィルスの蔓延に伴う行動規制が一段落したら,豪州調査を行う.豪州調査ができなければ,書籍の制作費に一部充当する.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 日本の大学新卒就職における 「体育会系神話」の成立と変容2020

    • 著者名/発表者名
      束原文郎
    • 雑誌名

      早稲田大学スポーツ科学研究科博士論文

      巻: 2019年度 ページ: 1-167

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 学生アスリートにおける学業と競技の両立意識の実態とその背景2019

    • 著者名/発表者名
      束原 文郎,横田 匡俊, 舟橋 弘晃, 澤井 和彦, 長倉 富貴, 石川 勝彦, 中村 祐介, 村島 夏美
    • 雑誌名

      スポーツ産業学研究

      巻: 29(4) ページ: 281-291

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 学生アスリート支援のための大学間連携ネットワークの構築に向けて ―米国における学生アスリート支援担当者会議N4Aの事例研究―2019

    • 著者名/発表者名
      長倉冨貴,石川勝彦,幸野邦男,束原文郎
    • 学会等名
      日本大学教育学会 第41回大会@玉川大学
  • [学会発表] 学生アスリートの就活満足度に影響を与える要因の検討 ~学生アスリート・プレミアムに着目して2019

    • 著者名/発表者名
      束原文郎,石川勝彦,舟橋弘晃,横田匡俊,澤井和彦,長倉富貴,中村祐介,岡本円香,小沼里奈
    • 学会等名
      日本スポーツ産業学会 第28回大会@日本体育大学
  • [学会発表] 人気企業への学生アスリート就職を規定する要因 -決定木分析を用いた探索的分析-2019

    • 著者名/発表者名
      石川勝彦,束原文郎,舟橋弘晃,横田匡俊,澤井和彦,長倉富貴,中村祐介,岡本円香,小沼里奈
    • 学会等名
      日本スポーツ産業学会 第28回大会@日本体育大学

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公開日: 2021-01-27  

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