研究課題/領域番号 |
17K18052
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
海老原 諭 国際医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (00386707)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 連結会計 / 会計ディスクロージャー / 地域医療連携推進法人 / 医療法人会計 |
研究実績の概要 |
本研究は,医療法人における会計ディスクロージャーの一環として,連結会計制度を導入するための課題と要件を明らかにすることを目的としている。少子高齢化や長期にわたる景気の低迷のため,医療をはじめとする社会保障財源の逼迫が声高に叫ばれている。わが国では,税制や保険制度など,医療に対する資金供給源源の確保(医療機関からすれば収入源の工面)の検知からこの問題が語られることが多いが,利用できる財源に限りがある以上,公的資金を受ける医療法人側の支出をコントロールすることも検討しなければならない。医療法人は,関連する他法人(一般にメディカルサービス法人とよばれる)を利用して,資金をプールし,医療法人には禁止されている配当を行っているとの指摘が長期にわたって行われてきた。連結会計制度の導入は,その実態を明らかにするためのひとつの有効な施策となると期待される。 研究初年度である2017年度は,2015年改正「医療法」において新設された地域医療連携推進法人に対して課される会計制度について検討した。地域医療連携推進法人は,医療法人を基本としつつも,関連する地方自治体や,福祉サービス,地域サービスを営む民間事業者の活動を1つの組織のもとに集積する新たなフレームワークである。現在,医療法人は「非営利」という名目のもとに民間事業者(企業)とは明確に区別する論調があるが,メディカルサービス法人のような民間企業をその背後で営んでいることが事実上要因されている医療法人の実態があり,また,徳洲会事件で見られたようにそれが医療法人の経営者(経営陣)の資金源として利用されている現実に鑑みれば,この医療法人を企業と区別すべきとする論調に無条件に趣向することはできない。地域医療連携推進法人に関する研究は,将来,医療会計において営利・非営利の境界を撤廃していくための切り口になるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017年度は,地域医療連携推進法人に関する研究については一定の成果を得たが,主眼である医療法人会計についての研究が予定通りに進捗していないことが原因となっている。全体の研究進捗計画の遅れについては,2018年度中に対処できるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は,本研究の最終年度となるため,2017年度に遅れていた医療法人会計の研究に主眼を置いていく必要がある。とりわけ,医療法人の非営利性に係る問題が,会計制度にどのような影響を与えている・与えてきたのかについて精査しなければならない。また,2015年改正「医療法」において強制開示が行われるようになった医療法人について,会計情報を直接取得できるようになったことから,それらの情報を利用して医療法人会計の実態調査をあわせて実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
最大の差異要因である旅費について,計画では東京への資料収集を行うことにしていたが,これらが校務および所属先異動のため実施できなかった。また,物品費についても同様であり,資料収集にともなう研究作業に遅滞が生じたことから支出が少なくなっている。所属先異動後,校内業務・研究環境が安定してきたことから,本年度は予定通りの実施が可能になる。
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