研究実績の概要 |
本研究は、レッジョ・エミリアの幼児教育アプローチに由来するListening Pedagogyの視点から、多様な幼児の能動性を引き出す遊びの構造化について検討することを目的とする。2020年度は、レッジョ・エミリア様式をとるイタリア、スウェーデンなどの保育哲学、方法理論について、文献購読、オンライン研究会によって研究を深めた。また、2018年に実施した遊び実践を分析し、言語的文化的に多様な背景を持つ子どもとの間でおこなう遊びの構造化について検討した。また、ブラジルの子どもが通う保育施設でのフィールド調査を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行によって実施できなかった。そこで2020年後期から、プレイグラウンドにおいてzoomを使った学習支援活動(週1回)を実施し、多様な背景を持つ子どもと学生が継続的に関わる機会をもうけ関係構築に努めた。また過去のプレイグラウンドでの遊び活動の映像データを学生と一緒に視聴し、子どもの声をどのように聴くことができるかを議論する場をもうけた(2回)。これらの活動は、カリフォルニア大学で実施されたカンファレンス(オンラインでの実施)で報告された。
1)白石淑江、井上知香、最上秀樹、米川香織、石黒広昭、内田祥子、「保育にとって記録とは何か ー日本の保育はReggio-inspired Pedagogical Documentationから学ぶことがあるのか」日本保育学会第73回大会 自主シンポジウム。 2)蓮見絵理・内田祥子・石黒広昭 (2020). 言語的文化的に多様な子どもとの対話:音を使った即興演奏過程の微視的分析. 日本哲学プラクティス学会編 思考と対話, vol.2. 1-12. 3)Uchida, S. (2020 ). Multicultural Playshop: Play-based university-community collaboration for Japanese Brazilian preschoolers in Gunma, Japan. University-Community Links 2020 International Conference, UC Berkeley, March.
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今後の研究の推進方策 |
1)関連する研究知見の整理:Listening Pedagogyをめぐっては、現在北米や北欧を中心に様々な議論が展開されている。特に、ドキュメンテーションと呼ばれる記録方法が、子どもの探求を捉え、参加者間の対話を広げる重要な媒介となることが指摘されている。このような研究知見の最新の動向をオンライン研究会や文献等を通じて引き続き学ぶ。 2)就学前施設のフィールド・リサーチ:上記の知見を踏まえ、多様な背景を持つ子どもの能動性を引き出す遊びを長期的に構造化し、そのなかで子どもや大人の発達を検証することを目指す。 3)先進地域での成果報告:カリフォルニア大学で開催されるUniversity-Community Links International Conference, UC Berkeley,に参加し、成果を報告する。
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