研究課題
本研究では、非ヒト霊長類をモデルとして、MRI脳区分マップを作成し、人類進化に伴う脳構造の経時的変化の定量画像分析を行う。これにより、各脳領域の構造と領域間の構造ネットワークにおけるヒトの特異性を見出し、その発達様式を明らかにすることを目指している。本研究では、これまで、米国のJohns Hopkins University School of Medicineの森・大石研究室の技術的支援のもと、日本モンキーセンターが所有する様々な種類の霊長類の脳固定標本に対して、東京慈恵会医科大学が所有する9.4テスラの高磁場MRIを用いて、様々な種類の霊長類脳標本の脳MRI(拡散強調画像、T2強調画像)を撮像してきた。2018年度の主な研究業績として、これまで収集した12種の霊長類脳標本の脳画像を集約することで、霊長類の比較神経科学のためのオープンリソースリポジトリ“The Japan Monkey Centre Primates Brain Imaging Repository for comparative neuroscience”を開発し、日本モンキーセンターのホームページを通して広く公開した(http://www.j-monkey.jp/BIR/index_e.html)ことを挙げる。脳画像だけでなく、メタ情報(レッドリスト、分布域、身体計測値、寿命、妊娠期間、養育行動、社会構造など)、撮像方法も公開した。第二に、上記の成果を学術論文として出版した(Sakai et al., Primates, 2018)。第三に、従来の撮像技術では困難だった、チンパンジー脳標本の全脳レベルでの高精度な拡散強調画像の撮像にも成功した。その他の研究実績として、招待講演一題、国際会議における発表2件、国内会議における発表3件も行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、霊長類の脳MRIデータベース・システムの開発・公開を進めることができたから。
ビデオ学術論文のJOVE誌から、高磁場MRIを用いた様々な大きさの霊長類脳標本に対応した高精度な脳MRIの撮像方法に関して、論文投稿と取材の依頼があった。現在、この論文の作成に取り組んでいる。2019年度内に、論文の出版と撮像方法の公開することを目指す。これにより、霊長類脳イメージングにおける技術的基盤の発展と普及への貢献が期待できる。
現在、本研究課題に関するビデオ学術論文を作成しており、2019年度も投稿・校正作業が続く。これに伴い、同時期まで霊長類脳標本の脳画像を追加で収集する可能性もある。よって、これらの研究活動に必要な経費として、オープンアクセス料(約350000円)と、脳標本の運搬のための出張経費(約220000円)をあげる。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
Primates
巻: 59 ページ: 553~570
10.1007/s10329-018-0694-3
http://www.j-monkey.jp/BIR/index_e.html
http://lbam.med.jhmi.edu/