周囲からの様々なサポートは,ストレスを緩衝し,抑うつの予防になることがわかっている。本研究の目的は,抑うつ予防のため,「自分は家族や友人からサポートを得られる」という予測(サポート期待)を高める介入ワークの原型を作成することであった。 そこで,家族・友人とのサポートのやりとりの維持・促進に向けた心理教育として,先行研究をもとに4回のセッションの心理教育を作成し,女子大学の心理学の授業内で実施した。そして,心理教育の実践に伴い,授業前(pre),授業直後(post),授業後1か月後(follow-up)の3回にわたってサポートのやりとりに関連する各指標(サポートのやりとりに向けた自己効力感,家族・友人からのサポート,家族・友人へのサポート提供,社会的スキル)を測定した。4回の心理教育を心理学系の科目内で受講した33名を介入群,同大学同専攻でこの授業を履修しなかった35名を対照群とし,各群の3時点の各測定指標の変化を潜在曲線モデルによって検討した。その結果,対照群に比べ介入群のいくつかの指標ではセッション前よりも向上が見られる可能性が示唆された。友人からのサポートに関してはセッション直後に一時的に向上するに留まる傾向も示唆された。 本研究の限界点や今後の課題としては,授業内での実施によって介入群・統制群にランダムに配置ができず,準実験的デザインでの検討にとどまったことや,履修人数に応じて得られたサンプルサイズが限られたことであった。以上の点を踏まえ,今後は厳密な無作為配置による実験デザインでの効果の検討が求められる。しかしながら,本研究により,今後サポート期待を増やすためには,受け手に対する介入ワークの実践と,サポート提供者となり得る人々へのサポートへの動機付けや心理教育が有効であることが示唆された。
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