本研究は中国社会の特質を考える視点において以下の意義がある。すなわち、基層社会に生きる人々は、為政者の政策や運動に対し、自己あるいは自己が所属する集団の生存・存続のために参加していった。しかし、その際には、自己あるいは集団にとっていかなる利点があるのか、あるいは、いかにして従前の関係性を維持するのかをふまえたうえでの参加であった。それは、ときに自己の従来のありようの持続として現れたり、ときには自己の近代社会における社会上昇の機会としてとらえたりした。こうした政策の意図とその基層社会における理解との齟齬は、現在にまで持続する中国社会の特質として提示することができるのではないだろうか。
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