研究課題/領域番号 |
17K18259
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
福田 裕大 近畿大学, 国際学部, 准教授 (10734072)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 録音技術史 / 19世紀のフランス / 聴覚文化 / シャルル・クロ / ヴィリエ・ド・リラダン / サウンド・アート |
研究実績の概要 |
大きくいって以下3点の成果があった。 1.本研究全体の総括にあたるものとして、以下の論考を執筆した(福田裕大「シャルル・クロという問題系:録音技術から捉える」、『Journal of international studies』第4号、近畿大学国際学部、pp. 45-76)。シャルル・クロの仕事を軸にして、19世紀フランスにおける録音技術の誕生・普及に関連する問題系の広がりを大きく展望しつつ、同時代のフランス哲学・生理学における身体観の揺らぎや、ヴィリエ・ド・リラダンの『未来のイヴ』など、これまでに論じられることの少なかったトピックについて議論を行うことができた。 2.歴史研究としての本研究の成果の現代的意義を問うための試みとして、以下のシンポジウムを開催した(シンポジウム「音響メディア史とサウンド・アート:歴史・創造・アーカイブの現在」、2020年2月16日、於:国立国際美術館)。キットラーの研究以降盛んになっている録音技術の歴史をめぐるエピステモロジックな研究が、アートをはじめとする現代の文化的コンテクストのなかでいかなるアクチュアリティを持ちうるかを問うために、歴史研究者・アーカイビスト・アーティスト・キュレーターによる領域横断的なディスカッションをおこなった(登壇者は以下の通り:秋吉康晴、大沢啓、城一裕、藤本由紀夫、アンヌ=ロール・シャンボワシエ)。 3.ここまで2年の研究期間中に進めてきた、スコット・ド・マルタンヴィルと彼の発明した「フォノートグラフ」に関する資料調査の結果を論文化するための作業を進めてきた。この成果は次年度に、国際日本文化研究センターの研究グループ「音と聴覚の文化史」の成果刊行物に寄稿するかたちで公表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「5」に記述した論文(「シャルル・クロという問題系」)を公表したことで、本研究そのものの計画はおおよそ遂行されたといえるが、計画段階から重要な成果公表の機会として想定してきた研究グループ「音と聴覚の文化史」(国際日本文化研究センター)の成果物の刊行が令和2年度以降に変更されたため、この準備に対応するべく研究期間を1年度延長した。 同じく「5」に記述したシンポジウムの開催を前後する時期からコロナウイルスの流行をめぐる混乱が極めて大きなものとなった。当初の計画では、シンポジウム開催後にその内容をとりまとめ、なんらかの形で文書化し、公表する予定であったが、上記のような不測の事態につき、その動きを取ることができなかった。この件に改めて取り組むため、やはり研究期間の延長が必要であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
以下2点の目標の実現に向けて活動を進める。 1.「7」に記述した通り、国際日本文化研究センター内の研究グループ「音と聴覚の文化史」の成果物に寄稿するための論文執筆に取り組む。2.同じく「7」に記述した通り、令和元年に開催したシンポジウムの内容を取りまとめ、別途成果公表することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
「7」「8」に記述した通り、研究期間を一年延長する。それにともない、本研究の成果公表を行うために繰越し額を使用する。具体的には、上記シンポジウムの文字起こし等に配分する予定である。
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