本研究の目的は、外来化学療法を受ける高齢進行肺癌患者の治療前後にわたる栄養状態の変化と関連要因、および栄養に関連する生活行動について調査し、治療前評価としての栄養障害スクリーニングプログラム開発に向けた基礎データを得ることである。 本研究の対象となる患者に対し、治療開始前から治療4クール目までの期間において、それぞれのクール開始前に体重および骨格筋量を含む体組成の測定、治療に伴う栄養状態及び悪液質の状態把握、食生活環境に関する調査等を行った。また治療期間中の副作用の出現状況や疾患に伴う症状の有無及びその変化について情報を収集するため、治療日記の記載を求めた。調査期間は2018年度6月から2020年9月までである。 期間中、8例の調査を実施した。治療開始前の評価でがん悪液質の状態に該当した症例は8例中7例であった。治療の延期やスキップを要する程度の副作用の出現が見られた症例、もしくは治療開始後早期の段階で病状の進行による治療内容変更が必要となった症例は8例中3例であり、うち殺細胞性抗がん剤による治療例が2例、免疫チェックポイント阻害剤による治療例が1例であった。3例はいずれも治療開始前の評価でがん悪液質の状態に該当し、骨格筋量の低下を示す骨格筋指数が治療開始前から治療期間中を通じて基準値以下であった。また3例のうち2例は食生活を含め生活上の支援が得られない環境にあった。外来化学療法を受ける高齢進行肺癌患者における治療前の栄養状態評価として、がん悪液質の状態及び骨格筋指数の評価を行うこと、また栄養状態に影響を与える要因として患者が受けることのできる食生活支援の状況を把握することの重要性が示唆された。
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