EWA学習モデルのパラメーターから具体的な行動パターンを解釈することが困難であったため、本年度より、あらかじめ研究者が具体的な行動パターンを想定したうえで、その行動パターンと整合的なデータの割合および行動パラメーターを同時に推定するFinite Mixture Modelを用いたプロジェクトへのシフトを決めた。また、その過程でプロジェクトが対象とする有権者の投票行動を、投票にかかる金銭的費用および機会費用に対する反応に絞ることとなった。さらに、上記のプロジェクトに加えて当初予定していた公共財の自発的供給に関しても、派生的なプロジェクトとして公共材供給のタイミングをプレイヤーが内生的に決めるモデルの現実妥当性を検証する実験室実験研究として発展させることにした。 投票費用に関するプロジェクトについては次の結果を得た:(1)半数近くの参加者の行動が、機会費用を考慮して投票へ行くか否かを決める意思決定と整合的であった。(2)機会費用を考慮しているとみなせる意思決定では、機会費用の上昇が投票確率を下げる効果は金銭的費用の3分の1であった。これらの結果は現在American Journal of Political Scienceへの投稿準備中である。 また、公共財供給のタイミングに関するプロジェクトでは次の結果を得た:(1)理論的には、初期賦存が平等になるほどプレイヤーには公共財への供給量を先に行うインセンティブが生まれる。(2)(1)の理論モデルを検証する実験室実験を行った結果、初期賦存が平等であるときに参加者には公共財への供給を先に行おうとする傾向が見られた。これらの結果はCanadian Journal of Economicsへの投稿を経て、現在レフェリーの指示を受けた改訂作業を進めている。また、日本経済学会2020年度秋季大会での報告も予定されている。
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