研究課題/領域番号 |
17K18454
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高本 康子 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 地域比較共同研究員 (90431543)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 日本陸軍 / メディア / 宗教 / 遺品 / 異文化接触 / 記憶 / 戦後日本 / 近代日本 |
研究実績の概要 |
本年度の研究活動としては、以下のものがある。①陸上自衛隊旭川駐屯地北鎮記念館所蔵資料および北海道内の個人資料調査。旭川駐屯地資料は、本研究の核心となる重要性を持つ資料群であり、また本研究が対象とする中で最大の資料群でもある。本年度はこの資料群の調査分析を集中的に進めた。また旭川駐屯地資料と同様に、旧日本陸軍第七師団に関連する、北海道内の個人資料を複数件掘り起こし、整理分析を行った。更に、関東および関西地方において、同様に旧日本陸軍に関連する、比較的規模の大きい個人資料群を複数件調査し、暫定リストを作成した。②公開研究会の開催。旭川駐屯地資料について詳細な調査経験を持つ防衛大学校准教授関口高史氏を講師とし、「「北鎮」とロシア」と題して公開研究会を行った。当日の参加者は多く、特にアカデミズム外からの一般聴講が目立った。この開催により、親世代の第七師団経験をどう受け止め、引き継ぐかという問題に直面している世代に加え、そのような背景を持たない若い世代まで、少なくとも北海道という地域社会において広く関心が持たれていることを明らかにしたと言える。③海外の研究者との連携。フランス国立科学研究センターのアリス・トラバース氏が率いるチベット軍事史プロジェクトに参加した。更にオーストラリア国立大学のリ・ナランゴア教授のもとで、旧日本陸軍資料の調査および著書執筆を進めた。特にキャンベラの戦争記念館においては、資料の社会的活用に関する諸事項も含め調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究推進上において、調査実施の順序を再考すべきと考えられたため、29年度の活動内容を変更した。それにより、予定以上に進捗した部分とそうではない部分が生じた。予想された以上に、特に進捗したと言えるのは、①個人資料の検索と調査、②国内海外との人的連携の確保、の二点である。しかしこのため、29年度において実施予定であった、旭川駐屯地以外の国内各駐屯地資料館の調査が一部、以下に述べるように30年度に延期となった。ではあるが、本研究が、公的なアーカイブではない、つまり非公開で所有者すら資料の全貌を把握していないような資料群を研究対象に多く含むものであり、特に個人所有の資料に関しては、遺品の所有者との信頼関係が充分に形成されていなければ、調査自体が成立しえないことを考えると、人的連携の確保は必要不可欠である。また今後、本研究が持つ挑戦的意義の十全な活用および展開を期するには、海外との連携が望ましく、本研究初年度において上記①②のような成果を得られたことは、非常に有益であったと考えられる。一方、本研究において中心的な研究対象である旭川駐屯地資料の調査は予定した以上に進んでいるため、研究期間全体において予定した調査研究は充分に遂行しうると考える。
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今後の研究の推進方策 |
30年度は、全国駐屯地所蔵資料の調査研究を集中的に行う。29年度で残している個所、30年度に調査予定の個所に加え、31年度で予定して居る個所も含めて調査を実施する。具体的には、愛知、東北各県、新潟、長野の各方面である。また、海外の研究者とのより広くかつ強固な連携の形成に努力する。具体的には、前述の、フランス国立科学研究センターチベット軍事史プロジェクト主催シンポジウムに参加し、研究成果を発表、同時に情報交換を行う。またオーストラリア国立大学のリ・ナランゴア氏との共同研究を引き続き進め、旧日本軍資料についての今後研究を展開するための人的連携拡大に努力する。本研究の中心的対象資料である旭川駐屯地資料、およびその周辺の個人資料については、従前通り予定した作業を進める一方、29年度と同様に公開研究会の開催を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究上の状況により29年度実施予定の調査を30年度に延期したため。
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