研究課題/領域番号 |
17K18454
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高本 康子 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 地域比較共同研究員 (90431543)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2023-03-31
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キーワード | 日本陸軍 / メディア / 遺品 / 宗教 / 異文化接触 / 記憶 / 戦後日本 / 近代日本 |
研究実績の概要 |
本研究は2020年度以降、新資料の発見により、研究調査の主な対象を、本研究スタート時に予定した自衛隊各駐屯地の保存資料から、東京都内二か所の個人所有の資料群としてきた。この二資料群は点数も非常に多く、また駐屯地資料が持たない特色を持つため、本研究で取り扱う資料の標準軌的存在となると考えることができるためである。例えば、駐屯地資料がややもすれば第二次世界大戦期のものに集中する傾向があるのに比べ、この二資料群は、資料内容が時代的に偏ることなく、明治から現在までの資料が均衡して含まれている。またその内容も、旧陸軍関係を中心とする駐屯地資料とは異なり、外交、経済、教育、宗教、文化など多岐にわたっている。海外との関連も、駐屯地資料がその部隊が関係した特定の地域に集中するのに対し、この二群は各地域を広く網羅しているのが特徴である。以上の特色に注目し、20年度以降本研究では中心的な調査対象としてきた。しかし、所有者が非常に高齢であり、かつ単身世帯であるため、新型コロナウイルスによる新型肺炎の流行という状況下においては、本研究のための訪問が所有者の健康状態に重大な影響を与える可能性があることが、20年度に引き続き21年度も非常に憂慮された。そのため、21年度においても、直接調査の予定を22年度に先送りせざるをえなかった。従って21年度は、リモートで可能な、聞き取りを中心とする情報収集、および資料情報の整理・分析、更に、調査済み分の目録と解題、データアーカイブの作成、そしてコロナウイルス流行の条件下でも無理なく調査が実施可能な、研究者居住地からの遠距離移動を必要としない地域に存在する、小規模な個人所有資料の調査が主な作業内容となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究で取り扱う対象としてメインとなった上述の都内二資料に関しては、現地調査の達成分は約60%であり、新型コロナウイルス流行の状況下にあったことの本研究へのネガティブな影響は小さくないと言わざるをえない。しかし、調査対象が公的機関の所有ではなく個人資料であり、あくまでも所有者の好意と信頼を十分に得た上で調査が実施可能になることを考えると、コロナ禍の諸事情をおして調査を通常通り行おうとすることは、本研究の根幹をゆるがしかねないと考える。すでに上に述べたように、21年度は、リモートで可能な、聞き取りを中心とする情報収集、および資料情報の整理・分析、更に、調査済み分の目録と解題、データアーカイブの作成、そしてコロナウイルス流行の条件下でも無理なく調査が実施可能な、研究者居住地からの遠距離移動を必要としない地域に存在する個人所有資料の調査が主な作業内容となった。従って旅費の必要がなく、また使用する機材や消耗品類等は20年度までの購入分でまかなうことができたので、21年度に特に支出がなかったのはそのためである。しかし本研究では、本来目的としていた現地調査を適切に行える時期が到来した時にこそ、調査実施の十全な実施が実現できるように、21年度はあえて、上述のような研究内容を選択した次第である。また、別項(「今後の研究の推進方策」)にも述べたが、この二資料群の今後の、より広く有益な活用をはかるために、海外に存在する諸資料との連続性を調査分析し、所有機関との連携を積極的に構築するべきと考える。22年度はそのための海外調査を実施する予定であり、これも21年度の研究内容を以上に述べたようなものとした大きな理由の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、21年度まで見合わせていた、上述の都内2か所の個人資料を対象とした実地調査の、未実施分を優先して行う。コロナウイルスに対してもある程度、日本社会において認識も共有されてきており、きめ細かな対策を万全にとった上で感染状況を見定めて実施するのであれば、十分に所有者およびその周辺の関係者に理解を得ることは可能であると考える。また、この二資料群のより広く有益な活用をはかるために、海外に存在する諸資料との連続性を調査分析し、所有機関との連携を積極的に構築すべきであると考える。これもコロナウイルスの感染状況などに左右される可能性はあるが、上述の海外との連携のための海外調査も実施したいと考えている。更に二資料および駐屯地資料の目録および解題、デジタルアーカイブの作成を、20年度以来前倒しして進めてきたが、この作業を引き続き行い、完成を目指す。さらに可能ならば、コロナ禍の影響で道外の駐屯地調査がままならなかったかわりに、当初予定した以上にきめ細かい調査が実施できた北海道内の個人資料、それも駐屯地所蔵資料との連続性が注目されるもので、人的な連携が十分確保できているものについて、更に分析を進めたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
最大の理由は、21年度の研究内容を、新型コロナウイルスの流行下においても十分に適切性が確保できる活動内容に絞ったためである。つまり、リモートで可能な、聞き取りを中心とする情報収集、および資料情報の整理・分析、更に、調査済み分の目録と解題、データアーカイブの作成、そしてコロナウイルス流行の条件下でも無理なく調査が実施可能な、研究者居住地からの遠距離移動を必要としない地域に存在する個人所有資料の調査を行い、本来21年度に予定していた現地調査は、資料所有者の事情等に配慮して実施を見合わせた。 同時に、22年度に新型コロナウイルスの状況が改善されれば、本研究で予定していた調査内容を十全に行うことは可能だと考えた。そのため、あえてその用途で使用できる研究費を温存できる方法で、21年度の研究活動を行った。
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