本研究は2020年度以降、東京都内二ヶ所における個人所有資料の発見により、研究調査の主な対象を、スタート時に予定した自衛隊各駐屯地資料から、これらの資料群へと変更し調査を進めてきた。理由は、これらの資料群が、突出した点数と、時代的にも内容的にも広い範囲の資料を多岐にわたって均衡して含んでおり、本研究における標準軌としての役割を果たし得ると位置づけられるためである。但し前年度に続き、所有者が非常に高齢であることから、新型コロナウイルス感染への懸念が払拭しきれない状況にあり、現地での調査活動は制限されざるを得なかった。にもかかわらず所有者の健康状態は良好であり、最大の協力を得られたことは本研究にとって非常に幸いであった。これにより現地調査の他、前年度に引き続きリモートでも聞き取りを中心とする情報収集、資料の整理分析、調査済み分の目録と解題作成を進めた。以上に加え本年度では、本研究の成果の今後における展開的活用について特に考慮し、1.地域社会との連携という点に注目して、駐屯地資料の中でもより地域との関係が深い資料群、及び同種の資料が民間有志によって維持されている施設、更に2.駐屯地資料との共通性及びヴァラエティの展開が見込めることから海上自衛隊所蔵の旧海軍資料、また3.として、1.及び2.のような遺品資料が戦後日本社会においてどのような役割を果たしてきたのかという点から、報道映像等の資料の調査を実施した。
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