研究課題/領域番号 |
17K18456
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
守川 知子 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00431297)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
|
キーワード | 墓 / シーア派 / 死生観 / イスラーム / 都市 / 地理空間情報 / 聖者廟 / 移葬 |
研究実績の概要 |
本年度は、Covid-19の世界的感染流行のため、イランやエジプトでの海外調査を行うことができず、また、予定していた国際研究集会「Cemeteries in the Islamic World」を開催することができなかった。 そのため、本研究プロジェクトの資料調査の過程で発見した新出史料である、1920年代のシーラーズ旧市街の「死亡者帳簿」である『シーラーズの遺体洗浄場所報告台帳(Daftar-i Raport-i Ghassal-khana-yi Shiraz)』(約1000名の死亡者の名前・年齢・職業・居住街区・死亡原因/病名・罹患期間・墓地・死亡診断医・葬儀場所・その他について記載がある)の文字起こし作業と帳簿全体のデータベース化を進めた。この貴重かつユニークな史料からは、シーラーズの市壁内にある聖者廟附設の墓地か市壁外にある一般墓地のいずれの墓地に住民は埋葬されるのかといった問題、および街区と墓地の関係、聖者廟と街区の立地といった都市と墓地の空間構造が明らかになるとともに、シーア派イスラームに特有の「移葬」(聖者廟やイマーム廟に死体を運び埋葬すること)のために遺体を一時安置する風習がごくわずかではあるものの確認することができた。 また、「イスラーム教の聖地巡礼とその多層性――日本の巡礼との比較研究に向けて」と題する論考を上島享・吉田一彦編『日本宗教史2 世界のなかの日本宗教』(吉川弘文館、2021年2月)に寄稿するとともに、19世紀のシーア派社会の「移葬」について、疫病蔓延防止の点から国境で巡礼者たちが隔離され、巡礼者と死体の双方が検疫を受ける必要があったことを論文としてまとめた(守川知子「隔離される巡礼者たち――シーア派聖地巡礼と検疫制度の近代」『歴史研究』(特集:感染症と人間の移動)1011、2021年7月号掲載決定)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
Covid-19の世界的感染流行により、国際研究集会が開催できず、様々な地域・社会の墓地研究との比較検討や意見交換ができなかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後もしばらくは海外調査や国際研究集会の開催は困難と想定されるため、オンライン等を用いた講演会などの形式で国内外の研究者らと意見交換を行う。 また、それぞれ特徴ある史資料の残るイスファハーン、シーラーズ、アルダビールの3つの都市に対象を絞って、都市と、聖者廟・墓地・街区の関係を重点的に検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19の世界的感染流行に伴う海外渡航の禁止のため、海外調査が不可能となり、あわせて海外の研究者を招聘して行う国際研究集会を開催できなかったため。 関連書籍・地図等の物品費として30万円、研究成果報告および資料調査のための旅費50万円、講演謝金、GISを用いた墓地・街区・都市のデータ入力作業、および英語・ペルシア語の校閲作業への謝金として70万円を計上する。
|