研究課題/領域番号 |
17K18510
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
谷川 竜一 金沢大学, 新学術創成研究機構, 准教授 (10396913)
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研究分担者 |
岡本 正明 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (90372549)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | トンネル / 植民地開発 / 豊後土工 / 戦後賠償 / 高度成長 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本・アジアの近代化において極めて重要な役割を果たしたにもかかわらず、特殊な労働を担う存在であったためにこれまで知られてこなかった、大分県・旧南海部郡(現・佐伯市周辺)の出稼ぎトンネル坑夫集団「豊後土工(豊後どっこ)」の活動解明を目的としている。 豊後土工を考察するなかで、整理されていった申請者の研究視角としては、次の5つがある。それぞれ、1)豊後土工を育んだ旧南海部郡の環境・歴史、2)戦前日本の近代化、3)アジア植民地開発、4)戦後高度成長、5)アジア賠償・援助である。これらについてこれまでの3年間の研究を通じて概略把握することができた。そして昨年度(3年目)においては、インドネシアにおける調査を計画していたとともに、日本国内の様々な場所に豊後土工をそのルーツとするトンネル関連会社があることが具体的に見えてきたので、そうした人々へのインタビューを本年度(4年目)に計画していた。 しかし、本年度においてはコロナ禍により現地調査が不可能となった上、高齢の豊後土工へのインタビューが難しくなり、インタビュー要請の多くが断られたり、自粛したりせざるを得なかった。そのため研究方針を切り替え、研究資料の収集やすでに集めた資料の考察に力を入れるとともに、研究成果の発表に集中することとした。調査の進捗には大きな問題があったが、研究分析・成果発表の点では非常に大きな結果を得ることができたと考えている。 具体的な成果としては、佐伯市の歴史研究者らで作っている歴史ある研究誌『佐伯史談』へ上記1)の観点に関する論文を投稿し、研究成果の一部を地域へお返しすることができた。また、国際シンポジウムや国際セミナーにおいても発表を行い、上記3)、4)、5)の観点より、豊後土工のグローバルな活動について研究成果を発信することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究全体ではコロナ禍により当初予定していた調査が進まず大きな問題となった点は否めない。特にインドネシアでの現地調査が不可能となった。また、日本国内のインタビュー調査なども、インタビュー対象者に高齢者が多く、調査が断られたり、自粛せざるを得なくなった。ただし、調査自体の方針を柔軟に変更するなかで、研究成果の発信や考察の深化に関しては充実して進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
豊後土工の国内・海外での活動の展開について、予定していた調査が頓挫してしまっているので、海外調査よりもより可能性の高い国内調査を可能な限り進めたいとおもっている(もちろん海外調査も可能性をぎりぎりまで模索したい)。 具体的には、昨年度形成したトンネル建設業者の方々とのネットワークを活用し、タイミングを見つつ調査を展開する。調査成果全体のまとめを構想しつつ、一つでも多くの研究成果を出して、調査最終年度を終えたいと考えている。具体的には現段階(2021年4月)で、調査対象候補としては北海道や関西などの企業を予定しており、状況を見極めつつ年度内ぎりぎりまでこうした調査を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によりインドネシアにおける調査や国内調査のほとんどすべてが不可能となったため、もう一年延長することで調査の可能性を模索したい。また、日本国内における豊後土工が設立した地域毎の企業に関する調査も、コロナ禍のなかでもうまくタイミングを見つけて調査を進めれば、そのフィージビリティは高い。そこでもう1年延長し、本研究の枠組みで最大限の情報を集め、研究成果に盛り込みたいと考えた。
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