本研究は、教師が「文学作品に描かれた解釈の分かれる問い」に着目し、直接学生と対話する経験の中で、学校教育で何らかの生きづらさを抱えてきた学生たちの本音を引き出すものである。言葉にしがたい思いを抱えて生きる学生たちの、簡単には表現し得ない言葉の本質をつかむためには、学生たちの表面上の言葉を受け止めるだけでは限界があり、何より教師が学生を前に、自身も言葉にしがたい思いを抱えて生きる一人の人間として学生の前に立つことが肝要であるという実感を得た。また人が無意識の感情を芸術活動によって引き出す表現アートセラピーの方法は、教師が学生の言外の思いを引き出す有効な手段となりうるという知見を得た。
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