今後の研究の推進方策 |
日本人の色嗜好には、色から連想される物体の嗜好に加えて、色から連想される抽象的概念が影響することが予想される。たとえば、白は「純粋」というイメージと結びつき、「純粋」というイメージは好まれるので、白が好まれるという三段論法的な説明である。一方、『日本の伝統色 その色名と色調』(長崎, 2006)などに基づき予備的に分析した結果、日本の伝統色は明度や彩度の低い色が多いことが分かった。Cognitive Science誌の掲載論文(Yokosawa, Schloss, Asano, & Palmer, 2016) では、現代日本人はそのような地味な色はあまり好まないことが分かっている。しかし、和風商品は地味な色でも人気があることなどから分かる通り、同じ色でも「伝統色」として見れば好ましいと評価される可能性がある。すなわち色嗜好の仕組みを明らかにするためには文化的影響の考慮が不可欠であり、次年度は現代日本人の伝統色に対する嗜好を切り口として検討する。色から連想される具体的な物体のほかに、その色が歴史的に持つ抽象的な意味合いなども嗜好に影響している可能性がある。
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