本研究では、誘電泳動法を応用した1分子電流検出法の創成を目的とした。まず、電子線描画法等のナノ加工技術を駆使し、絶縁層(SiO2)で表面を保護したAu ナノ接合をフレキシブルな基板上に作製した。これを用いて、ナノ電極間に交流電圧を加えた状態で1分子コンダクタンス測 定を実施した。その結果、高周波電界の強度や周波数に応じて、1分子コンダクタンスのばらつきが変化する傾向が観測された。その変化は、長鎖アルカンジチオールではほとんど現れず、分子長が短いπ共役系分子において顕著であった。これにより、誘電泳動の原理によって、ナノ電極間にトラップされた1個の分子の配向が制御可能であることが実証できた。
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