研究課題/領域番号 |
17K19736
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
野口 光一 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10212127)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | IL-4 / 神経障害性疼痛 / 脊髄マイクログリア |
研究実績の概要 |
末梢神経損傷後の脊髄後角では、マイクログリアの増加・活性化によって神経系が構造的にもダイナミックに変化し、マイクログリア由来の液性因子によって後角ニュ-ロンの興奮性が増加して神経障害性疼痛の増悪因子として働いている。本研究の目的はそのようなマイクログリア由来の個々の因子に着目するのではなく、活性化マイクログリアそのものの性質を文字通り「逆転」させ、炎症性細胞の増加によって破綻した脊髄後角の「修理」を行うための基礎的な研究を行う事である。これにより、上記の細胞移植などと併せて、「治療」から「Fixation=修理」へのパラダイムシフトを起こしている昨今の研究潮流のメインストリームの一つを狙うものである。 マクロファージ系譜の細胞の極性であるM1/M2 バランスがマイクログリアにも存在し、炎症-抗炎症バランスがいくつかの分子で調節可能であるという、可逆性活性化マイクログリアの発想が原点にある。 最終的に得られた結果は、末梢神経傷害後にラット脊髄において、IL-4受容体の増加を確認出来た。そして組織学的確認実験により、その増加は活性化したマイクログリアで生じていることを証明出来た。さらに細胞内シグナル伝達因子であるSTAT6のリン酸化フォームと共存していることが判った。これらの結果は、末梢神経障害後の活性化マイクログリアには、これまで報告されてきた炎症促進性の作用のみならず、炎症抑制性の受容体増加という側面があり、外来性の治療の新しい可能性を示唆したと言える。これらの結果は、グリア関係のトップ雑誌であるGLIAに発表することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記に記したように、すべてのデータをまとめて2018年度中にグリア関係のトップ雑誌であるGLIAに発表することが出来た。当初の計画以上の成果であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
IL-4Rの脊髄マイクログリアのみならず、後根神経節という一次知覚ニューロンに存在している可能性が途中の実験中に発見し、本研究を延長しその可能性の検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度内に脊髄内IL-4を受容する細胞成分について確認できたが、グリア細胞以外の細胞要素が存在する可能性を示すデータが得られた。具体的には末梢神経損傷後の後根神経節でのIL-4を受容体発現増加が認められたということである。そのため当該年度内に本課題を終了することに困難が生じたため次年度へ延長することとなった。次年度には本課題で行ってきた髄腔内IL-4投与が後根神経節細胞に作用している可能性の検証と、グリア細胞以外を介したIL-4の鎮痛機能の有無の確認のため、試薬や抗体の購入に使用する。
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