研究課題/領域番号 |
17K19793
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
近藤 尚己 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (20345705)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 健康格差 / 機械学習 / マーケティング / 社会疫学 / 生活保護 / 健康の社会的決定要因 / 行動科学 |
研究実績の概要 |
経済的な困窮は健康づくりや受診行動を難しくする。そこで、マーケティング手法を応用した支援システムを構築する。生活保護受給者のデータベースを活用して、生活保護に至った背景や成育歴、生活歴、健康リテラシー等の情報に基づき、1.生活保護受給者への適切なケア提供に向けた集団セグメント化アルゴリズムを開発する。また、2.生活保護受給者の健康支援・生活支援システムへと応用し、その有効性と効果を検証する。 29年度に生活保護事業管理データベース事業者(北日本コンピューターサービス株式会社)及び2自治体との連携体制を構築し、実地で活用しやすいシステム構成のあり方や、役立つ分析内容等に関する意見を収集した。30年度は2自治体の生活保護管理データと医療保険のレセプトを入手して分析、また確率的潜在意味分析などのソフトクラスタリング手法を用いて、受給者のセグメント化を行った。セグメントデータの一部をシステムに実装した。 31(R1)年度は6自治体にデータを拡張して分析、同様の結果を得て、外的妥当性を確認、公表した。子ども・成人・高齢者それぞれの慢性疾患リスクと生活保護受給者の経済状況以外の社会状況(孤立・不就労等)との関連を確認して発表した。年度内に予定していた、収集されたアンケートデータを用いた分析については、新型コロナ感染症等の影響を鑑みR2年度にまとめるように変更した。その間、生活困窮や孤立状態について、質問しやすい文言でスクリーニングするツールを開発・出版した。また、医療機関での生活困窮者ケアのあり方について考察し総説として複数出版した。 なお、本プロジェクトを基盤として、日本学術振興会特別研究員(SPD)が採択され、オランダエラスムス大学等との共同研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染症蔓延に伴う外出自粛により一部のデータ収集作業が困難となり、当初計画していた期間内に関連作業を行うことは断念し、期間延長後に継続することとした。それ以外については、計画通り実施・成果報告し、また、初年度申請時には検討していなかったが、プロジェクトを進めるなかで必要性を認識した作業を追加できた。具体的には、予定通り使用データの自治体数を6つに増やして分析を終えた。結果は、厚生労働省事業(R1年度社会福祉推進事業)における根拠データとして使用された。加えて、社会的課題のスクリーニングツール開発等、支援システムの実装に資する追加作業をした。
(H31年度交付申請時の予定) 31年度は、ケアプランの実際の運用データ等を追加してセグメントをアップデートし、精度を高める。関連するケアプランのアップデート等、システム全体の最適化を進める。データを収集する自治体数を最大10程度まで増やす。収集されたアンケートデータを用いて、適正な健康行動の維持や中止に関連する社会的要因についての分析を進め、論文にまとめる。
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今後の研究の推進方策 |
アンケートデータを追加した分析の改善と、そこから抽出されるセグメントのアップデート結果を取りまとめ、関連する知見を出版する予定。引き続きデータを収集する自治体数の増加をめざす。本格的な運用に向けて、システム実装後の運用状況も観察していく。厚生労働省の被保護者健康管理支援事業等の効率を高める支援システムとしての活用を進めるべく、開発した手法やアルゴリズムを積極的に公表していく。 本プロジェクトを基盤に開始したエラスムス大学等との共同研究では、ミクロデータを用いた各国の生活保護関連制度の効果比較等を行っていく予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究成果によって論文を作成し、査読付き学術誌へ投稿中であるが採択に当初想定より時間がかかっているため。論文採択後はオープンアクセス費用等へ使用予定。
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