経済的な困窮は健康づくりや受診行動を難しくする。そこで、マーケティング手法を応用した支援システムを構築する。生活保護受給者のデータベースを活用して、生活保護に至った背景や成育歴、生活歴、健康リテラシー等の情報に基づき、1.生活保護受給者への適切なケア提供に向けた集団セグメント化アルゴリズムを開発する。また、2.生活保護受給者の健康支援・生活支援システムへと応用し、その有効性と効果を検証する。 29年度に生活保護事業管理データベース事業者(北日本コンピューターサービス株式会社)及び2自治体との連携体制を構築し、実地で活用しやすいシステム構成のあり方や、役立つ分析内容等に関する意見を収集した。30年度は2自治体の生活保護管理データと医療保険のレセプトを入手して分析、また確率的潜在意味分析などのソフトクラスタリング手法を用いて、受給者のセグメント化を行った。セグメントデータの一部をシステムに実装した。 31(R1)年度は6自治体にデータを拡張して分析、同様の結果を得て、外的妥当性を確認、公表した。子ども・成人・高齢者それぞれの慢性疾患リスクと生活保護受給者の経済状況以外の社会状況(孤立・不就労等)との関連を確認して発表した。生活困窮や孤立状態について、質問しやすい文言でスクリーニングするツールを開発・出版した。新型コロナ感染症等の影響を鑑み延長したR2年度には、給付額の減少が医療機関受診の確率を高めることや所得水準にかかわらず生活保護受給者がその他の人々より疾病リスクを多く抱えている可能性を見出す分析結果を得た。得られた結果をもとにセグメント化アルゴリズムをアップデートして、開発したシステムに実装した。
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