研究実績の概要 |
少子高齢化の進展や疾病構造の変化が進む日本では、疾病の予防・診断・治療法の開発・改善を目指す医学研究はますます重要になっている。研究にはより多種・多量の試料や情報の解析が必要になる中、欧米ではICT(情報通信技術)を用いた患者・市民主体のデータ入力を用いた活動が複数始まっているが、日本では同様の活動はほとんど進んでいない。本研究の目的は、患者主体のデータ入力を利用した医学研究システムに関する国内外の状況把握を行うこと、およびそうしたシステムのモデルを日本において試行的に実践し、日本での医学研究への患者参画の実践可能性と課題について明らかにすることであった。 2020年度においては、まず、患者自身が健康情報や心身の状態などの情報をインターネットを介して入力したり、プロジェクトの運営などに主体的に参加する活動(Participant-centric Initiative, PCI)について、Scoping Reviewによる分析を行った結果についての論文を発表した(Hamakawa et al. 2021)。また、患者と研究者の協働による医学研究であるRUDY JAPANにおいて、プロジェクトの運営を患者とともに検討する「運営ミーティング」を約2か月に一度、定期的に開催するとともに、新規の希少疾患である表皮水疱症を対象に新しく登録を開始した。さらには、これまでのRUDY JAPANにおける患者参画に基づいた活動について、2021年2月に国際誌に発表した(Hamakawa et al., 2021)。論文では、プロジェクトの運営、新規質問票の作成、情報発信を含む研究情報に関するコミュニケーションといった多様な側面において患者参画が実現できたことを記述し、今後、同様の活動を企画、運営するために必要な経験と留意点について報告を行った。
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